福島原発事故により放射性物質の汚染を受けた森林の長期的管理のため、森林における放射性Csの動態の把握が求められている。樹木は、Csの吸収や体内輸送、落葉等により森林内のCsの移行経路の1つとなっており、樹木中におけるCsの動態および存在形態は森林内のCsの動態を把握する上で重要な要素となる。本研究では樹木におけるCsの動態の理解のため、スギ林・広葉樹林から採取した葉、樹皮、リターについて水と酢酸アンモニウムによる放射性Csの抽出実験を行い、樹木中のCsを体内輸送や溶脱によって移動しやすい形態のCsと移動性の低い安定な形態のCsに分類した。2015年6月に採取したコナラの新葉中のCsは大部分が水で抽出された事から、容易に移動する形態である事が示唆された。スギ葉については2015年の新葉では多くのCsが抽出されたが、葉齢が古くなるにつれ水や酢酸アンモニウムで抽出されないCsの割合が多くなり、古い葉に含まれるCsはより安定性が高い事が示唆された。スギ樹皮では水や酢酸アンモニウムによるCsの抽出率は低く、スギ林・広葉樹林のリターも同様にCsの抽出率が低かった事から、樹皮やリターに含まれるCsは移動しにくい安定な形態である事が示唆された。