日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: P1-257
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学術講演集原稿
担子菌菌糸の垂直分布と子実体中放射性セシウムとの関係
*林 拓也岡田 直紀
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抄録

【背景・目的】 福島第一原子力発電所の事故後、大量の137Csが放出され森林に沈着した。菌類子実体中には高濃度の137Csが集積し、属間で集積の程度が異なることが報告されている。その要因のひとつとして、土壌中の菌糸の垂直分布の違いが指摘されている。この点を確認するため本研究では安定同位体を用いて菌糸の土壌中垂直分布と子実体中放射性セシウムの吸収源を推定することを試みた。【方法】 福島県川内村の広葉樹林(原発より約20km)にて外生菌根菌と腐生菌、合わせて約90試料と、リター層と腐植層および鉱質土壌を2 cmごとに深さ30 cmまで採取した。子実体試料は乾燥後に粉砕、土壌試料は風乾し、それぞれの安定同位体比(δ13C、δ15N、δ34S )および137Cs濃度を測定した。【結果】 土壌のδ13C、δ15N、δ34Sはいずれもリター層と腐植層で最も小さく、鉱質土壌では深くなるにつれて大きくなった。子実体中の安定同位体比と137Cs濃度は属間および種間で差が見られた。腐生菌よりも外生菌根菌の方がより深い土壌層に菌糸が分布することが安定同位体の値から示唆されたが、子実体中の137Cs濃度とは必ずしも対応していなかった。

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