筆者らは、1996年から霧島山系の老齢なアカマツ・モミ・ツガ天然林において、上層を占める直径が20cm以上の樹木を対象に、樹冠(枝張りと葉密度)をもとに健全度モニタリング調査を行っている。これまで数回にわたってその経過報告をしているが、モニタリング開始から20年を迎えたので、これまでの推移をまとめて解析した。その結果、特にモミの健全度が非常に低下したことがわかった。本来の調査目的は、霧島地域のモミ・ツガ・アカマツ天然林を今後も健全に維持するためには健全な母樹が必要であるが、その健全度が20年前に低下しているように感じられたことを評価するためであった。しかし、近年の中国等からの越境大気汚染物質による森林被害が深刻化しその評価が必要となり、霧島以外にも屋久島と宮崎県椎葉村等でモミの健全度モニタリング調査を開始し、地域間の比較も行っている。