抄録
放棄された火入れ草地の森林の回復過程における鳥散布型樹木の役割を明らかにするため、岡山県真庭市蒜山地域において再生林の林分構造の調査を行った。また、鳥類による草地への種子散布の可能性を検討するため、維持管理されている草地においてシードトラップによる糞の捕捉と、飛来する鳥類の観察を行った。調査の結果から、再生林内の残存孤立木周辺には鳥散布型樹木が集中して更新する傾向が認められた。しかし、鳥散布型樹木は高木種であっても低木層にとどまり、再生林の林冠構成種にはなっていなかった。シードトラップからはヤマザクラなどの種子が採取され、それらはヒヨドリなどの鳥類によって散布された可能性が示唆された。これらのことから、草地内の孤立木は鳥類による種子散布を促進し、草地からの再生林の種多様性に影響を与えていると考えられた。