日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: S7-3
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学術講演集原稿
樹木の定着を土中で待つ菌根菌と動物たちの役割
*橋本 靖
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キーワード: 外生菌根, 森林更新, ほ乳類
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抄録

樹木の種子が散布され実生が定着する際に、土壌中で菌根菌と円滑に菌根を形成し相利共生関係を成立させる必要がある。特に、未だ樹木が定着していない場所では、菌根共生系を早期に獲得することが、樹木実生の定着の成否を決める大きな要因になると考えられる。主に樹木と共生する外生菌根菌は、次世代の分布を広げるために、胞子を飛ばすきのこを作ることが多いと考えられる。しかし彼らはある程度の宿主特異性があるため、風に乗った胞子の長距離移動は可能と考えられるが、都合の良い宿主植物の根にたどり着く可能性は低いと考えられる。一方、これらのきのこは、野生哺乳類や昆虫等の食物となり、糞によって感染力のある胞子が運ばれている可能性が指摘されており、樹木の定着の重要な要素である可能性が高い。しかし、この動物による有効な運搬が、各種の生態系でどの程度行われているのか、生態学的な研究例はあまり多くない。今回は、樹木が未だ定着していない立地の土壌で、いつから外生菌根菌の感染源が存在しているのか、また、それら感染源を野生の哺乳類が運んでいる可能性とその程度についての研究例を紹介し、森林の再生や管理を考える上での興味につなげたい。

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