日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: S7-4
会議情報

学術講演集原稿
豊かな森が育む林床植物の菌根共生
*松田 陽介
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

わが国の森林は多種多様な樹木によって形成され,多くの樹種は地下部において菌根菌と共生関係にある.樹木に定着する菌根菌は土壌中に菌糸を伸び広げ,その先で別の樹木個体にも感染・定着する.これを菌根(菌)ネットワークと呼ぶ.このネットワークは成木間だけでなく,成木と林床の樹木実生や草本植物との間でも形成されている.菌根菌は従属栄養性であるため,炭素源を宿主樹木の光合成に依存する.同所的に生育する宿主樹木間では,同一の菌根菌が同時に共有されることもあり,菌根ネットワークの構築は炭素源の融通を通した相互扶助的な関係の構築に寄与すると示唆されている.林床植物の中にも菌根ネットワークに依存する(すなわち,炭素源の一部または全ての炭素源を根に共生する菌根菌に依存する)植物が近年報告されている.絶滅危惧種や無葉緑植物が顕著な例であるが,緑色の遍在種であってもその可能性が示唆されている.本発表では,森林生態系を地下部から概観し,樹木間の菌根ネットワークの構造特性や薄暗い林床下に生きる植物の効果的な炭素源の獲得戦略について菌根菌の菌糸の連結に着目して紹介し,森林の多種共存を可能にする仕組みを考察したい.

著者関連情報
© 2016 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top