抄録
森林における樹木および土壌の放射性セシウム濃度と蓄積量の経年変化を明らかにするため、福島県および茨城県のスギ林、ヒノキ林、アカマツ林、落葉広葉樹林において、原発事故後から5年間の森林内の葉、枝、樹皮、材、落葉層と鉱質土壌層の放射性セシウム濃度と蓄積量を調査した。葉の濃度は落葉広葉樹以外の林分で低下傾向にあり、枝と樹皮の濃度は全ての林分で低下傾向にあった。また、材の濃度はスギ林では林分により異なる傾向を示したが、落葉広葉樹林では上昇傾向が見られた。多くの林分において、落葉層の濃度は低下し、0cmから5cmの鉱質土壌層の濃度は上昇する傾向が見られた。これら変化に伴い、特にスギ林では、樹木地上部と落葉層の蓄積量は減少し、鉱質土壌層の蓄積量は増加する傾向を示した。ただし、全ての林分において合計蓄積量の有意な変化は見られず、放射性セシウムは森林内に留まっていると考えられた。