日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: T5-1
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学術講演集原稿
森林樹冠による福島原発事故由来放射性セシウムの初期遮断率
*加藤 弘亮恩田 裕一
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抄録
 本研究では、林野庁が平成23年度に取得した広域・多地点の林内空間線量率データを統計解析するとともに、同地点での林内空間線量率の再測定を実施することにより、樹種や沈着量等の違いと林内空間線量率の時間変化傾向の関連性を調査した。その結果、以下の事が明らかになった。スギ林では、セシウム137の総沈着量と林床インベントリーの関係の近似式の傾きがアカマツや広葉樹と比べて小さな値を示した(0.45)。このことから、樹種の違いにより大気から沈着した放射性セシウムの樹冠遮断が異なることが示唆された。林内空間線量率の低減速度は、常緑針葉樹・特にスギ林で物理減衰よりも遅く、一方で広葉樹では物理減衰と同程度の低下速度を示した。いずれの樹種でも、湿性沈着の割合が多い地点で樹冠遮断率がやや小さな値を示した。以上の結果から、林内空間線量率の時間変化傾向は、樹種ごとの放射性セシウムの樹冠遮断率の違いや沈着形態の影響を受けて異なることが示唆された。
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