主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第128回日本森林学会大会
回次: 128
開催地: 鹿児島県鹿児島市(主に鹿児島大学郡元キャンパス)
開催日: 2017/03/26 - 2017/03/29
遺伝子発現に基づく樹木のストレス診断技術の開発に向けて、これまでブナ葉を対象に乾燥・高温・酸化の環境刺激に対して特異的に発現する遺伝子や、衰退木の葉で特異的に発現する遺伝子の選抜を行い、各々の指標化を行ってきた。次の課題として、環境指標と衰退指標の関係性を診断するために、遺伝子のシグナル伝達に基づいた因果関係の評価法が求められる。本研究では、主要な遺伝子に絞った遺伝子発現データからシグナルネットワークを推定することで、環境変動と樹木の衰退の因果推論が行えないかについて検討した。ブナ天然林(6林分)で採取した葉のRNA-seq解析データを用い、ベイジアンネットワーク推定を行った。現実的に計算可能な条件は解析ノード数が約300遺伝子で親ノード数の上限が3の範囲だった(CPU:Intel Xeon E5-2670,メモリ最大消費11.0 G,CPU時間3.4日間)。さらに現地の環境データとシュート成長量のデータを条件に加えたところ、遺伝子ネットワークは環境要因から成長量までを有向ネットワークで結び、既知の代謝経路(KEGG)と遺伝子発現データを加えることでシグナル伝達の生理学的解釈が可能になった。これらに基づいた因果推論について紹介する。