主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第128回日本森林学会大会
回次: 128
開催地: 鹿児島県鹿児島市(主に鹿児島大学郡元キャンパス)
開催日: 2017/03/26 - 2017/03/29
樹幹の水分通導の回復については、道管周囲の柔細胞や木部繊維の関与が示唆されているが、そのメカニズムの詳細は解明されていない。本研究では巻き付き型のつる性木本植物であるサルナシとフジを材料として、通水の回復過程や回復能力を比較した。つる性木本植物は支持機能をホスト樹木に依存できるため、木部繊維による主幹(蔓)の物理的強度の補強よりもその伸長成長にエネルギーを使って、効率よく光の豊富な場所を獲得する傾向がある。解剖学的特性としては大径の道管が木部面積の大部分を占めることがあげられ、長さ数十mの主幹の先端まで大量の水を輸送するのに有利だと考えられる一方、乾燥や凍結によるエンボリズムが生じやすいという欠点がある。サルナシは川沿いや谷筋など水辺に多く分布するが、フジは公園のように乾燥した場所でも生育可能であり、フジは効率的な通水回復機構を持つ可能性がある。生理的特性の異なる2種の主幹について、乾燥後の通水回復過程を観察した。また、それぞれの木部組織、特に道管の大きさ、柔細胞や仮道管の分布に注目し、解剖学的・機能的な違いを検証して、生存戦略について考察した。