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第129回日本森林学会大会
セッションID: M5
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学術講演集原稿
高山に遺存するハイマツ−菌根菌の集団遺伝構造
*小泉 敬彦奈良 一秀
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抄録

ハイマツは、氷期に日本へ分布を広げた外生菌根性樹木であり、現在は中部以北の高山帯に遺存集団が隔離分布している。菌根菌の遺伝子流動は胞子が担うことから、遺存集団間の遺伝的交流は胞子分散様式に影響されると考えられる。本研究では、宿主ハイマツ(風媒花)と菌根菌であるベニハナイグチ(風散布)、ハイマツショウロ(動物散布)の集団遺伝構造を比較した。国内のハイマツ分布域を包括する9ヶ所からハイマツ針葉と対象菌種の菌根を採取し、核SSRマーカー(ハイマツ:14座、ベニハナイグチ:9座、ハイマツショウロ:8座)を用いて各サンプルの遺伝子型を決定した。STRUCTURE解析の結果、風散布を行う種(ハイマツ、ベニハナイグチ)では、北海道のハイマツ集団を除いて集団間に明瞭な遺伝構造の違いは認められなかった。一方、動物散布種のハイマツショウロではその違いが明瞭であった。集団間の遺伝的分化度(G’ST)を比較した結果、動物散布種では他2種に比べて遥かに高い値を示した。このような結果から、樹木の定着に重要な働きをする菌根菌にも集団隔離の影響は及んでおり、特に動物散布種では宿主樹木以上に遺伝的交流が制限されていることが示唆される。

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