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宮本 基杖
セッションID: A1
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林減少の削減へ向けた国際的な取組が本格化している。森林減少の主な直接原因はアブラヤシ・ゴム・大豆・牛などの輸出用商品作物への農地転換であるが、どのような対策が森林減少を削減するかについては不明な点が多い。本報告では、20世紀後半に森林減少が続いたインドネシアと森林減少がほぼ止まったマレーシア半島の研究結果をもとに、森林減少の対策として何が有効であるかを検討する。具体的には、マレーシア半島の森林減少抑制に貢献した「貧困削減」に着目して、インドネシアとマレーシア半島における貧困と森林減少の関係を比較検討した上で、貧困は森林減少を引き起こすのか、森林減少は貧困を増大させるのか、貧困削減は森林減少を抑制するのかについて考察する。
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高橋 卓也, 淺野 悟史, 内田 由紀子, 竹村 幸祐, 福島 慎太郎, 松下 京平, 奥田 昇
セッションID: A2
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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滋賀県野洲川流域を対象として、2015年2月から3月にかけて、主観的幸福度および森林を含む自然との関係性についてのアンケート調査を実施した。郵送による配布数は34,691件、回収数は3,220件、回収率は9.3%であった。主観的幸福度が土地利用および生活利便施設の立地、社会関係資本、森林との関わり、および幸福度研究で通常検討される人口学的変数からどのように影響を受けるのか、GISと多変量解析の手法を用いて分析を行った。分析の結果、山を見たときに感ずる主観的幸福度(森林幸福度)は、森林率との相関は無く、森林との具体的関わりを示す変数と正の相関があった。とくに、「生きもの・植物との触れあい」の影響が大きかった。「山での仕事」は、平均的には相当な正の影響があるが、ばらつきが大きく個人差があると考えられる。森林との関わりによる森林幸福度、全般的幸福度への影響は、居住地域によって異なる。森林が遠くにある地域住民にとって、森林との関わりが森林幸福度を増大させる効果はより大きい。一方で、森林に近い住民の全般的幸福度は生き物との触れあいといった具体的関わりによって、より顕著に増大する。
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石崎 涼子, 三俣 学, 齋藤 暖生, 川添 拓也
セッションID: A3
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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土地所有の如何にかかわらず、森林など自然へのアクセスを一般大衆に開放する社会的な仕組みとして、自然アクセス権を設定している国々がある。その内容は多様であり、先行研究では、私有地へのアクセスの程度や自然植物の採取、レクリエーションのための滞在の可否などを基準として、自由アクセス型、限定アクセス型、非アクセス型に分類できるとされている。これまでに報告者の一部は、先述の研究で自由アクセス型の国とされてきたスウェーデンにおける万人権と呼ばれる自然アクセス権と、限定アクセス型の国とされてきた英国におけるフットパスと呼ばれる自然アクセス権に関する調査研究を行ってきた。 本研究は、これらの研究を発展させ、自然アクセス権の多様性と特徴、環境資源の管理・利用・保全に関わる制度としての性格の検討を深めるために、限定アクセス型の国とされながらも英国フットパスとは異なる制度をもつスイスとドイツを調査対象国として自然アクセス権の実態把握を試みるものである。その第一歩として行った現地調査および文献調査から、両国における自然アクセス権の制度的な内容と現在の森林利用を巡る諸問題について報告する。
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許 思寒, 百村 帝彦, 御田 成顕
セッションID: A4
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林資源の保護と国民の観光需求を満たすため、中国で初めの森林公園である張家界国家級森林公園が1982年に設立された。「森林公園管理弁法」、「国家級森林公園管理弁法」など法制度も整備され、森林公園の管理機構と管理制度が定められた。そして2000年代以降に森林公園の設置数は急増し、2016年現在、合計3,392箇所、その総面積は1,886.7万haに達した。 中国の森林公園の経営・管理は、政府主導モデルと所有権経営権分離モデル二つのモデルが存在する。政府主導モデルとは、地方政府が森林公園の資源を管理するとともに、森林公園の観光事業を経営することである。所有権経営権分離モデルとは、地方政府は森林公園の資源の保護・管理を行うが、森林公園の観光経営権は企業に請負うことである。 公園の経営・管理には、政府、企業、そして森林公園内や周辺に居住する地域住民などの利害者が、密接に関与している。 本発表では、中国の森林公園の定義、位置づけ、発展過程や管理体系などを整理するとともに、中国の森林公園の経営・管理のモデルを紹介し、利害者の視点から森林公園の経営・管理に関する問題点を議論した。
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高野 涼, 伊藤 幸男, 山本 信次, 滝沢 裕子
セッションID: A5
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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近年、林業の成長産業化や労働生産性の高い技術者の育成が重視される一方で、農的なライフスタイルを求めて若者が農山村へ移住する動きが田園回帰として注目されている。本報告の目的は、山村に移住した若者が志向するライフスタイルや農林業観、農林業技術の習得、山村振興の論理を把握することである。事例として、宮城県登米市米川地区に移住し農林畜産複合経営と山村振興を志向する20代男性を取り上げる。調査の結果、移住者は①森林を素材生産の場としてではなく、農業と一体的に利用する空間として認識し、②育成的林業ではなく生活環境の整備として森林管理に携わっていること、③高度な機械化をあえて志向しておらず、④施業技術はNPOや個人のネットワークにより習得していること、⑤山村振興のためにライフスタイルとして農林業を楽しむ価値観の普及を重視していること、⑥そうした価値観や技術を広める役割を担おうとしていること等が分かった。生産性の向上や高性能機械の普及といった評価軸では測れない発展観を持っていると言え、同じような価値観でつながるネットワークがライフスタイルを含めた技術の普及に寄与していることが示唆された。
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田村 典江
セッションID: A6
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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担い手不足は林業の課題のひとつである。これまで林業就業については、緑の雇用や林業大学校といった職業訓練の経路が中心的であった。しかし、これらと異なる地域起こし協力隊という経路による林業就業が近年、広がりつつある。特に自伐型林業を標榜する林業就業は、他の職業訓練型の経路には見られない特色ある取り組みといえる。本研究では、「津和野型自伐林業」を掲げて平成26(2014)年から地域起こし協力隊の募集を行っている島根県津和野町を対象として、受入側である町役場と応募者である隊員に対するインタビュー調査を行った。その結果、受入側である町役場は、後発林業地域であり管内に林業事業体が少ないという背景から、自伐型林業に魅力を感じていることがわかった。同時に隊員側は必ずしも当初より林業への就業を目指していたわけではなく、緑の雇用や「森林の仕事ガイダンス」に対する認知も低いことがわかった。地域起こし協力隊という枠組は、従来の林業就業支援枠組とは異なる対象にアプローチしているものと考えられる。このような多様化する林業実態を既存の林業施策にどう位置づけていくかを検討する必要がある。
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水間 亮洋, 枚田 邦宏, 奥山 洋一郎
セッションID: A7
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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市野瀬 愛
セッションID: A8
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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親山地区では、積極的に地域住民による森林管理活動が行われてきたが、可也山を活かしたコミュニティ作りの中で、今後、里山の管理や利用、災害の歴史の在来知の継承が必要となっている。しかし、地区内の子供は少なく他出者も在来知の後継者として捉える必要がある(徳野、2014)。本報告の目的は、森林に関する在来知継承の現状と課題を、家族と世代間の分析として考察することである。 研究方法は、地区内の大人(40名)に、①子ども時代に可也山で遊んだ経験、②現在の活動内容と管理への意識、③継承してほしい活動や在来知と他出者・Iターン者を含めた次世代の管理の展望の3点ついて聞き取り調査を行った。また地区内の子どもと同世代の他出者(1名)には、①可也山での遊び、②森林管理に対する意識の2点についてアンケート調査を行い、ワークショップを通じて、可也山の資源の把握実態や可也山への関心の程度を把握した。これらの結果から、地区内の大人は性別や世代に関わらず個々に多様な意見をもっていること、子どもは大人が森林管理をしていることを調査に参加した半数が知らないが、75%が森林は管理する必要があると考えていることが明らかになった。
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赤池 慎吾
セッションID: A9
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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周囲を海に囲まれた我が国では、古来より森林と漁業の関係が強く認識されてきた。明治以降、近代的土地所有権の確定にともない森林利用に対する公法的規制が制度化された。明治9年官林調査仮条例により官林内に「魚附場」(禁伐林)がはじめて規定され、明治30年森林法保安林制度により「魚付林」(普通保安林)が規定された。現行森林法においても「魚つき保安林」として継承され、2015年度末現在、高知県内には929ha(国有369ha、民有560ha)が「魚つき保安林」の指定を受けている。本報告は、高知県における「魚附場」及び「魚付林」の指定状況を『七郡禁伐林官林台帳』(1889年調整)、『高知県保安林台帳下調』(1903年調整)、『漁業ト森林トノ関係調査』(1911年)等から把握し、森林所有者と沿岸住民、あるいは住民相互の利害関係が公法的規制の原点である保安林制度の中にどのように取り扱われたのかを考察する。
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堀 靖人
セッションID: A10
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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ドイツの木材販売基金は木材販売基金法に基づく制度であった。もともとは1969年の森林販売基金法にもとづき基金が作られ、当初は森林販売基金と呼ばれていた。木材販売基金はボンに公法上の機関として設置され、木材の利用を促進するために、国内外の市場開拓、木材や木材製品の販売促進を行うことを目的としていた。活動の原資は、林業や木材産業から木材や木材製品の販売額から一定の割合で徴収される課徴金であった。課徴金を徴収するのは連邦の農業食料機関であった。木材販売基金は木材利用促進のためのユニークな制度であったといえる。しかし、木材販売基金は2009年に廃止された。連邦憲法裁判所による判決が原因であった。 本稿では、木材販売基金の活動状況と意義を明らかにするとともに連邦憲法裁判所の判決内容とその背景を明らかにする。
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立花 敏, 安村 直樹, 小坂 香織
セッションID: A11
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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豊富な人工林資源を有するニュージーランド(NZ)が、その資源をどう活かしていくのかを木材貿易に注目して分析した。NZでは、主要な植栽樹種であるラジアータマツを20世紀初頭に1ha当たり7千本の植栽密度で人工造林していたが、施業面での技術開発や種苗の品種改良等を進め且つ海外市場も視野に入れて低コスト化を図り、1990年代には800本程度の低密度植栽を行うようになった。人工林面積は、1920年代から3度の造林ブームを経て拡大傾向を続け、1990年代終わりには170万haを超し、そのうちラジアータマツが約9割を占めている。第3次造林ブームで植栽されたラジアータマツはまさに伐期に入り始めており、当面は年間3千万m3を超す丸太生産量が続き、その過半の丸太が輸出に向けられると考えられる。NZ政府は木材産業の発展を期待しているが、現状として大きな変革は生じていないため、製材品等の輸出の大きな伸びは当面考え難い。輸出先としては木材輸入量を増やす中国が主になっており、1千万m3を超す丸太が仕向けられている。この傾向は続くと考えられる。
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嶌田 栄樹, 峰尾 恵人, 佐野 薫, 早舩 真智, 藤野 正也
セッションID: A12
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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今日の「林業経済学」では,森林・林業を対象とした社会科学的な研究が幅広く行われている。しかし,その広範さゆえに林業経済学が扱う課題と方法が曖昧となっている側面もある。そこで本報告では,これまで林業経済学がどのような議論を重ね,今日の焦点はどこにあるのかを客観的に評価することを目的とした。まず,林業経済学界における主要論文雑誌である『林業経済』と『林業経済研究』から,題目とキーワードを抽出しデータ化した。次に,題目とキーワードそれぞれにテキストマイニングを応用し,10年単位で頻出語を集約し,その推移を検証した。対象期間は『林業経済』では1948年から2017年,『林業経済研究』では1955年から2017年とする。分析結果より,1980年代までは「資本」「構造」といった,経済学を想起させる単語が多く見られる一方,1990年代以降は,「事例」という単語が目立った。これらより,経済学に依拠した研究から事例研究への大きなシフトが1990年代頃に生じたことが示唆される。さらに1990年代以降,中心となるワードが「林業」から「森林」へと推移する動きも見られる。これらの流れは,林業経済学が扱う課題と方法の広範化を表していると言える。
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峰尾 恵人, 松下 幸司
セッションID: A13
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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梶間 周一郎, 内山 愉太, 香坂 玲
セッションID: A14
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林の管理,林地の所有権について,日本においては所有者不明林や管理が行われない森林の増加等の課題がある.本研究では,全国で初めて全所有者に郵送アンケートを実施した石川県小松市の,悉皆調査データを対象として分析を行った.研究目的は,都市近郊の森林所有者の管理行動を規定している要因を明らかにすることである.所有者が森林管理を行う基礎要因を明らかにするために,土地登録制度に付随する情報(森林の所在地,面積,境界)と所有者の属性(高齢化)が森林管理に与える影響を分析した.分析の結果,森林の境界を認知している所有者は,していない所有者よりも管理を行う傾向が明らかになった.さらに,所有者の年齢が高いほど、どのような条件にあっても管理行動が減退することも分かった.この結果から次の2点が示唆された.森林管理を行う上では,不明確な森林境界は管理の障害となるため,森林境界の確定作業が必要になる.②高齢化が一層加速する前に所有者を明確にし,管理方針を決定することが喫緊の課題である.
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柿澤 宏昭
セッションID: A15
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林行政の最前線に位置する市町村において、森林行政の展開や組織体制整備がどのように進んでいるのかについて研究が進んできている。これまでは合併市町村など規模の大きな市町村に関する研究が多かったが、森林行政の展開の困難さから言えば小規模自治体の状況について把握することが重要である。本報告では北海道のいくつかの小規模自治体を事例として、森林行政の具体的な展開とそれを行うための体制整備をどう進めているのかについて論じたい。森林行政については私有林管理、自治体有林管理、まちづくりと関わる森林施策に区分し、またそれぞれの市町村の政策全体のなかでの林務行政の位置づけや理事者層の意向と関わらせて分析を行う。専門的職員の確保・育成、地域課題の的確な把握、森林行政全体と関連付けした自治体有林の有効活用が森林行政推進の上で重要であり、またまちづくりと関わる施策展開は理事者層の意向が関与していることが明らかとなった。
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杉山 沙織, 興梠 克久
セッションID: A16
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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緑の雇用事業は国の失業対策とリンクした形で2003年より制度が開始し、2018年現在で15年目を迎える。育成する人物像は政策目標と連動しており、第1期(2003〜2005)では失業者対策、第2期(2006〜2010)では温暖化対策、第3期(2011〜2015)では利用間伐、第4期(2016〜現在)では主伐・再造林と、緑の担い手としてキャリアアップを目指す制度に発展してきた。本研究では、キャリアアップの体系が築かれた第3期に着目し、緑の雇用担い手対策事業の評価に関するアンケート調査で得られたデータを用いて林業事業体とOJT体制の関係の考察を行った。初年度から3ヶ年のフォレストワーカー研修 (FW研修)を受けた研修生 (FW)と所属する林業事業体の関係は、FWが従事する業務やそれを指導するOJT (On the Job Training) 体制に特徴付けられる。林業事業体に関して、位置する地域や経営形態、事業内容、従業員規模などから分類を行い、各事業体のタイプとFWの育成実態の関係を明らかにする。
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田村 和也
セッションID: A17
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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農林業センサスの農業集落調査における地域資源5種の保全の設問のうち森林について、都道府県別結果及び「地域の農業を見て・知って・活かすDB」の集落単位結果を用い、全国状況および農業集落の特徴との関係を概観した。2015年の全国13万8千の集落のうち森林があるのは76%、そのうち森林を保全しているのは23%で2010年から4ポイント増加し、割合は東北・北陸・東山・近畿で高く、北海道・関東・四国・南九州で低い。2010年に保全していた集落の8割が2015年も保全し、保全してなかった集落の1割が保全していた。森林を保全している集落の特徴を、立地・森林状況・人口世帯・集落活動等の面から検討したところ、農地の保全との関連が観察された。
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松下 幸司, 山口 幸三, 吉田 嘉雄, 仙田 徹志
セッションID: A18
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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総務省統計局による住宅・土地統計調査では、1998年以降、調査票乙(約50万世帯)において、現住居以外の土地所有(農地・山林を含む)に関する調査が行われてきた。2013年には、調査票甲(約300万世帯)に、現住居以外の土地所有に関する調査項目が追加され、調査票乙の記入欄は、4市区町村から2市区町村へと簡略化された。2013年には、調査票甲・乙の両方で農地・山林に関する調査が実施されたため、調査票甲・乙の結果比較が可能になった。調査票乙を再集計した結果、山林を所有する主世帯数は190万となり、これは、調査票甲による山林所有世帯数の267万の71%に相当する。調査票甲では農地・山林の所有の有無のみを回答するのに対し、調査票乙では市区町村名と面積を記入することなどから、約3割減っている。調査票乙による1ha以上の山林所有世帯数は60万、これは山林所有世帯数の32%である。60万という数値は2015年農林業センサスの1ha以上林家数である83万の72%に相当する。本報告は統計数理研究所「日本における所得・資産分布の計測史と再集計分析」及び京都大学農林水産統計デジタルアーカイブ講座のプロジェクト研究の一部で、総務省統計局の協力を得た。
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滝沢 裕子, 伊藤 幸男, 高野 涼
セッションID: A19
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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本研究の目的は、事業体の経営が素材生産へ移行している東北(岩手県・秋田県)において、林業労働力の確保と育成に関する事業体の新しい動向を捉えることである。森林組合を含む岩手県5社、秋田県6社の認定事業体への聞き取りを通して、採用や資格取得、独自の育成取り組み等に注目して特徴付けを行なった。その結果、採用に関しては新卒採用を強調するものと中途採用を強調するものと明確に分かれた。また、事業体は造林事業やそれ以外の事業多角化を行いながらも、機械化拡大によって素材生産を事業の核とすることが共通しており、機械操作のためには資格取得を重視していることも一致している。その資格取得は、研修制度内取得で十分とするもの、業務に応じて自社負担で資格取得を推進するもの、資格取得も含めた総合的な作業員育成をするもの、と取り組みは事業体によって異なりを見せた。しかし、育成が定着率に繋がっていない事業体も見られた。その違いは独自の教育制度導入、仕事の目的を明確に持つ人材や地域定住を重視した人材の採用、事業体や個人の業績に合わせた賃金制度の導入等特徴的な取り組みの有無が背景として推察される。
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芳賀 大地
セッションID: A20
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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経営学習論では職場における業務の在り方が学習と成長に重要であると論じる。本研究は森林組合における人材育成について、経営学習論の観点からその現状を明らかにすることを目的とし、鳥取県の 6つの森林組合の職員、作業班員に対してアンケート票調査を行った。そして経験学習サイクルモデルに基づいて、森林組合の職員、作業班員の成長環境について分析した。これは具体的経験、内省的観察、抽象的概念化、能動的実験というプロセスを循環的に経験することにより、能力の向上が実現するというモデルである。 作業班員はいずれのプロセスに関しても、ポジティブな評価を示す傾向があった。一方で、職員はモデルにおいて最も影響が大きいとされる具体的経験に関する項目はポジティブな評価が見られたものの、抽象的概念化、能動的実験に関する項目についてはネガティブな評価がポジティブな評価を大きく上回る項目が見られた。また、作業班員も職員も周囲からの支援に課題を抱えていると考えられ、特に上司からの精神支援に課題があると示唆された。近年活動量を増大させている組合では比較的良好な支援の存在が示唆されたが、その因果関係については今後の課題である。
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垂水 亜紀
セッションID: A21
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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近年、薪ストーブの需要が高まっており、とりわけ東日本大震災以降設置台数が伸びている。それに伴い、広葉樹の薪需要も大幅に増加していることが予想される。 垂水ら(2018)では、滋賀県を中心とした薪生産業者のヒアリング調査から、近畿圏での薪用広葉樹の確保が課題となり始めていることを明らかにしたが、本研究では薪用原木を伐採している森林組合、素材生産業者及びNPO団体等に調査を行い、広葉樹伐採の現状を明らかにし、今後の薪を中心とした広葉樹供給の検証を行った。
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小板橋 さゆり, 伊藤 幸男, 高野 涼, 滝沢 裕子, 陸 海璐, 佐藤 光弘
セッションID: A22
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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木質バイオマスを地域に普及させていくには、その市場はなお小さく未成熟であるため、多くの住民や事業体が参画しやすい環境づくりが重要となり、各自治体の取り組みが大きな意味を持つ。本報告では東北地域の地方自治体における薪・ペレットストーブ等の導入を中心とした木質バイオマス普及政策の実態を把握することを目的としている。東北地域においてストーブ設置等への補助事業を実施している市町村の割合は、青森県13%、岩手県45%、宮城県11%、秋田県32%、山形県86%、福島県24%と県ごとに大きな違いがあることが明らかとなった。県レベルでストーブの設置補助をしているのは、山形県、秋田県、福島県の三県である。秋田県と福島県は補助の上限が5万円に対して、山形県は10万円と他二県と比べて手厚い。山形県内の市町村は、県の補助に上乗せする形で補助事業を実施し普及を後押ししており、ペレットストーブの販売台数では全国2位となっている。報告では、特徴的な施策を実施している山形県内の市町村の実態を明らかにする。
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佐藤 光弘, 伊藤 幸男, 高野 涼, 滝沢 裕子, 陸 海璐, 小板橋 さゆり
セッションID: A23
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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近年、薪ストーブの導入台数が増加し、薪の需要量も増加している。従来の農山村部での薪の自己調達に加えて都市部では商品としての薪が流通し始めている。本報告では薪の供給主体と流通の実態を明らかにすることを目的としている。供給元である農山村地域を抱える地方都市の岩手県盛岡市を対象に分析を行った。盛岡とその周辺の供給主体は13社で、薪生産業者3社、薪ストーブ販売店4社5店舗、木材加工業者2社、ホームセンター2社4店舗であった。薪生産業者は立木を伐採・搬出・加工している専業業者と、チップ製造の傍ら規格外の木材を薪加工している兼業業者がいた。薪ストーブ販売店は立木伐採から薪販売までを行う業者と素材生産業者から原木を購入し薪加工を行う業者がいた。木材加工業者は製品の加工過程で発生した端材を木質燃料として販売していた。ホームセンターは県外薪生産業者から薪を仕入れ、軽トラックに積載可能な350kgで販売を行っていた。兼業事業者とホームセンターは薪流通の販路の拡大を目指している一方、専業の薪生産業者と薪ストーブ店は薪販売利益が少ないこと、高齢で生産規模の拡大ができないことが課題として明らかとなった。
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岡 裕泰
セッションID: A24
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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国連統計部の月間統計情報オンライン(2017年2月17日更新版)による建築統計と人口統計、および国連食糧農業機関の林産物統計(2015年12月更新版)を用いて、2000年から2014年までの各国の年次別建築面積(住宅、非住宅別)、住宅建築戸数、人口と、製材と木質パネルの合計の見かけの消費量(木材消費量)の関係を分析した。住宅建築面積のデータが掲載されている主要国18か国のうち、住宅建築面積のみの一変数によって各年の木材消費量を説明しようとしたときに決定係数が0.6以上になったのは、日本(0.93)の他、トルコ、ロシア、ニュージーランド、フランス等であり、一人あたりの木材消費量が大きい北欧諸国やドイツでは決定係数が低く、住宅建築に関わらない用途の比重が高いことが示唆された。住宅建築面積に比例する成分の割合は日本が88%と際だって高く、ほとんどの国は50%未満であった。住宅建築面積が1m2増えるごとの木材消費量の増分は0.1~0.4m3/m2程度の国が多く、日本は中庸であった。日本の人口あたりの住宅建築戸数は減少傾向にあるが依然としてかなり高く、一戸あたりの面積はやや小さい方だった。
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藤掛 一郎, 菊池 亮介, 土谷 周, 大地 俊介
セッションID: A25
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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今日では木造住宅の主要な構造材には集成材を使うことが多くなり、外材比率が高いことはよく知られている。しかしながら、スギの産地である宮崎県ではスギを多く使い、こうした全国的傾向とは全く異なる木材の使用が一般に見られる。そこで、本研究では、県内のプレカット工場主要7社と県央地区の地場工務店4社の木材使用状況を調査し、全国データとの比較を試みた。その結果、木材流通統計(2012)による全国のプレカット工場用材入荷量では構造材として使用される木材の42%が集成材で、ついでKD材が多く、未乾燥材等は12%を占めるに過ぎないが、宮崎県では集成材がプレカット工場で16%、地場工務店で3%、未乾燥材がプレカット工場で48%、地場工務店で62%を占めており、全国とは異なり、未乾燥材をプレカットすることが一般的であることが判明した。合わせて、プレカット工場の場合で柱は91%がスギ、梁・桁は82%がスギと、全国と比べスギ比率が極めて高かった。このような地場需要の存在は、宮崎県のスギ林業・製材業にとって大事なアドバンテージの一つとなっていると考えられた。
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樋熊 悠宇至, 立花 敏, 氏家 清和
セッションID: A26
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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2010年に公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が制定され、全国的に木造率が低位である公共建築物への木材利用拡大が促されている。これまでに公共建築物への地域材利用による経済波及効果を定量的に把握した研究は渕上他(2015)等に限られる。本研究では、埼玉県の県産木材を使用して建設された公共建築物を対象に、県産木材の利用が埼玉県内にもたらす経済波及効果を産業連関表を用いて推計した。推計では2つのシナリオ、すなわち加工における県外製材工場への流出を含む実際の流通経路に即した基本シナリオ、生産・加工・流通が全て埼玉県内で完結した場合を想定した比較シナリオを設定した。その結果、公共建築物の建設に使用した木製品の最終需要額は23,001千円であり、基本シナリオにおける生産誘発額合計は31,826千円、生産誘発係数は1.38となった。比較シナリオでは、生産誘発額合計35,956千円、生産誘発係数も1.56と高くなり、埼玉県内で完結した場合の経済波及効果が大きいことが判明した。県産木材を公共建築物に利用した場合の経済波及効果が大きいことから、その促進は林業・木材産業の活性化のみならず県経済にとっても効果があると言える。
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茂木 もも子, 立花 敏
セッションID: A27
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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多様な機能を期待される森林資源を持続的に管理し,利用していくには様々な課題が指摘されている。その一つに,素材生産(川上)から木材の最終消費(川下)までの木材流通における買い手と売り手の有する情報の偏りがある。買い手と売り手の有する情報の偏りはミクロ経済学の「情報の非対称性」として捉えられる。本研究では,関東地域でも有数の林業地であり,流域としてのまとまりのある西川林業地を研究対象とし,木材流通における各経済主体間での取引情報の非対称性を明らかにすべく,主たる経済主体に聞き取り調査を行った。西川林業地から生産される木材は,平成21年には西川広域森林組合により「西川材」として商標登録されている。買い手と売り手の取引情報については,NPOを中心に取りまとめを開始する動きがみられた。だが,各経済主体の生産量や需要量,在庫量等の把握及び共有,工務店等への要望や営業の不足が指摘されていた。森林所有者については,小規模所有者が多く,森林組合等の呼びかけがある場合,伐採の意思はあるという回答があり,森林組合の取りまとめ役としての役割が期待された。
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川﨑 章惠, 興梠 克久
セッションID: A28
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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林業は最も労働災害の多い産業の一つで,労働災害の発生率を表す死傷年千人率は1980年代後半から約30‰前後と横ばいが続いている。また、林業従事者数が減少しているにも関わらず、労働災害による死亡者数も40名前後で推移している。林業の労働災害の諸要因や災害発生パターンについては今富ら(1993)など,林業事業体の安全衛生活動等と災害防止の関連は山田(2012)や今冨(2013)によって明らかにされている。林業界では,林業・木材製造業労働災害防止協会により災害防止規定の策定や安全衛生活動の普及が行われているものの労働災害の発生は下げ止まりをみせている。本研究では,労働災害が減らない社会経済的な要因を厚生労働省「労働者災害補償保険事業年報」,「労働者災害補償保険労働災害統計年報」および情報公開請求により開示した同省業務資料を基に分析を行った。
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藤野 正也
セッションID: A29
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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「生態系サービスへの支払(PES)」を導入することで、森林所有者が皆伐を行なわず、森林管理を継続するための経済学的条件を、家計生産モデルを用いて明らかにした。さらに、PESの契約期間等の条件を様々に変化させるシミュレーションを行い、森林所有者がPESによる経営行動を変える金額を明らかにした。理論的検討の結果、現時点で皆伐せずにT期に皆伐することで発生する損失を上回るPESが設定されれば、PESが受け入れられると考えられた。さらに、統計資料をもとに木材価格等を設定し、利子率を1%から10%まで、契約期間を1年から25年まで、それぞれ段階的に変化させるシミュレーションを行い、1年1haあたりのPESを算出した。その結果、利子率の違いによりPESに最大10倍程度の差が生じ、契約期間の違いにより最大23倍程度の差が生じることが明らかとなった。
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尾分 達也, 佐藤 宣子
セッションID: A30
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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近年、我が国では木材利用の拡大が推進されており、素材生産者の安定的な生産が求められている。素材の需要増加に伴い、高性能林業機械を導入し、生産性を向上させようとする事業体が増えており、高性能林業機械の導入数は年々増加している。しかし、高性能林業機械の導入は規模の拡大になりえても、利益の増加には必ずしもつながってはおらず(吉田ら2005)、高額な機械の導入が過剰投資を引き起こすという内部的なリスクを高めている。しかし、機械の導入や使用継続という投資的なリスクが、経営にもたらす影響は把握されていない。そこで、本研究では、高性能林業機械への投資が、具体的にどのようなリスクを生じさせるのかを明らかにすることを目的とし、どのようなマネジメントがリスク回避策となりうるかを考察した。研究手法としては、素材生産が盛んな九州のうち、高性能林業機械所有台数の多い宮崎県、熊本県、大分県を対象として、アンケート調査を行った。高性能林業機械を導入している素材生産事業体(認定事業体)の、経営状況および高性能林業機械の導入方法や支払方法、修理費等について設問し、クロス集計と統計的な分析を行った。
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岩木 陽平, 尾分 達也, 佐藤 宣子
セッションID: A31
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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これまで、木材価格の低下により立木代がゼロの状況で、森林所有者の管理意欲の低下と十分に管理されない山林の増加が指摘され(堺、2003)、近年では境界不明森林の増加などが森林経営の意欲低下と関連づけて議論されている。それと同時に、近年自然災害による甚大な被害が全国各地で起こっており、森林被害をもたらしている。森林所有者が災害リスクをどのように認識して回避する対応を講じているのか、さらに発災後にどのような経営対応や支援策が必要かを明らかにすることは森林管理上大きな課題である。 そこで本研究では、森林所有者が自然災害に対してどのような経営対応とリスク軽減策を講じるのかどうかを明らかにすることを目的とし、2017年7月九州北部豪雨で甚大な被害を受けた大分県日田市において私有林経営者および日田市森林組合に聞き取り調査を行った。豪雨災害によって土砂崩壊(表層および深層)による立木喪失と林道・作業道の被害が見られ、下流域に流木被害をもたらした。また、同地域は1991年に台風による風害被害を受けた地域でもある。風害と土砂災害という自然災害の違いを含めて私有林経営のリスク対応を考察する。
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森田 えみ, 川合 紗世, 内藤 真理子
セッションID: B1
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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【目的】高齢化社会では健康への関心が高く、森林の健康関連分野の利用も期待されている。そのためには、中高年層での長期的な森林散策のトレンドを把握することも必要と考えられる。よって、本研究では、中高年集団の約5年間の森林散策頻度の変化と、関連要因を明らかにすることを目的とした。【方法】日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)静岡地区のベースライン(BL)調査、及び、約5年後の2次調査に参加し、有効回答をした3,441人(男性2,344人,女性1,097人, BL時の平均年齢52.4±8.5歳。平均追跡期間5.3±0.5年) を解析対象とした。森林散策頻度は質問紙にて6群(週1回以上~ほとんど行かない)で回答を求めた。【結果及び考察】森林散策頻度が増えていた人は793人、不変は1,760人、減った人は888人で、頻度は有意に減少していた(p=0.018)。要因別では、最も関連があったのは年齢で、70歳以上の群は有意に減少していた。また、女性、及び、健康状態が悪い人もそれぞれ有意に減少していた。高齢層ではBL時には利用頻度が高かったものの、約5年後には頻度の減少が認められたため、それを考慮した上で健康関連分野での利用推進を検討していく必要性が示唆された。
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藤原 拓摩, 比屋根 哲
セッションID: B2
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林の多面的機能発揮や林業の持続的な発展のためには幅広い層の国民の森林への理解が必要であり、国民に対して実際の森林体験の機会を増やしていく施策が重要と考えられる。そのためには、現時点における国民の森林に関する意識や利用状況、ニーズ等を把握する必要があるが、国民の森林に対する意識には地域性があると指摘されている(菅原,1985)。本研究では地域住民の森林に対する意識調査・研究事例を蓄積していく取り組みの一環として、森林の利用条件に恵まれた岩手県滝沢市内の滝沢駅周辺に暮らす住民を対象に、森林に対する意識や利用状況、住民と周囲の森林環境との関係性等を明らかにするアンケート調査を実施し、その特徴を明らかにすることを目的とした。アンケートは住宅への戸別訪問により配布し、郵送により回収した。配布数881、有効回答数382(43.4%)であった。 調査の結果、林業に対して否定的なイメージを持つ住民は少数であるが、身近な森林が伐採されることに対しては回答が「便利になるなら構わない」と「できるだけ少なくしてほしい」に2極化する傾向がみられる等、いくつかの特徴が見出された。
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大竹 芙実, 下村 彰男, 山本 清龍
セッションID: B3
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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都市公園は変革期にあり,指定管理者制度の導入や公園の多機能利用の推進など,民間活力を導入し公園に関わる主体を広げる動きに加え,公園の社会・文化的側面への関心も高まりつつある。また,そうした変化に応じて,「みどり」とのふれあいの場としての機能だけでなく,多様な催事等を通じた地域コミュニティの活性化,地域資源の保全活用の機能も求められるようになってきている。人々の都市公園に対する認識やニーズは時代,場所によって異なると考えられ,変遷や現状を捉えることが必要である。そこで本研究では,都市公園の社会的位置付けの変遷について催事を通して明らかにするとともに,今後の都市公園の可能性や相応しいマネジメントの方向性を示すこと,の2点を目的として,日比谷公園が開園した1903年から2016年までの114年間の新聞記事分析,2014-16年度に実施された催事の分析を行った。その結果,終戦の1945年頃までは国や都が主導して大規模なイベントが開催されていたが,近年は,民間や地域が主導して多様なイベントが開催され,新たな賑わいが創出されていた。また,公園に求められる役割は,各公園の周辺環境,地域との関わりの歴史が関係していた。
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張 平星, 深町 加津枝, 柴田 昌三
セッションID: B4
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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京都の東山北部から「白川石」とよばれる造園・建築用の花崗岩が産出されていた。昭和前期に白川石の採石が禁止され、その石切道が放棄され崩壊が進んでいる。本研究は白川石の石切道遺構の経路と地理条件を解明し、登山道としての利用可能性を検討することを目的とした。 明治22年以降の旧版地形図77枚から白川石の石切道の記号を抽出し、地形図とGPSを用いて現地調査を行った結果、白川石の石切道遺構が3区域で確認された。「瓜生山」の石切道は白川村から約0.8km・標高差約150mであり、谷筋の利用が多く、その大半が「京都一周トレイル」として整備されていた。「音羽川」の石切道は修学院から約1km・標高差約250mであり、その大半が音羽川の砂防工事の建設により消滅したが、砂防施設の見学ルートが設けられていた。「四明ヶ岳」の石切道は一乗寺から4km以上・標高差約550mであり、谷筋や傾斜面を変換しながら利用していた。 「瓜生山」の石切道は到達容易で、「音羽川」の石切道は川の景色が豊かで、「四明ヶ岳」の石切道は地形利用が多様で山の景色を楽しめる、といった3区域のそれぞれの特徴に基づいて、東山の自然と文化に親しむ登山道の整備が期待される。
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嵯峨 創平, 深町 加津枝
セッションID: B5
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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滋賀県と岐阜県の県境に聳える伊吹山(1,377m)は、古来から霊山として信仰を集める一方で「薬草の宝庫」と言われてきた。暖温帯林と温帯林、太平洋側と日本海側の植生の境界に位置するため1000種類を越える豊富な植物が確認されており固有種も多い。 伊吹山の東山麓に位置する岐阜県揖斐川町の春日地区は近世から「採薬の村」と呼ばれてきた。伊吹山麓に自生する薬草を採取あるいは栽培(半栽培)した薬草を利用して生活の中で飲用、食用、薬用等に利用してきた。明治時代から昭和戦前期までは伊吹薬草保護会という組織を持ち滋賀県側の薬種問屋へ販売することで山村の複合的な生業の重要な一角となっていた。こうした「薬草文化」と複合した山村の生業形態と資源利用の複合形態の変遷について文献調査およびヒアリング調査によって明らかにすることにより、現在の山村景観のなり立ちの基礎を考察することを本発表の目的とする。
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王 聞, 深町 加津枝, 奥 敬一
セッションID: B6
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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富山県西部に位置する砺波平野では、庄川扇状地を中心に散村集落が広く分布する。散村集落の屋敷林は、生活の一部として防災や微気候の改善などの機能を果たし、経済面では用材としての価値が大きかった。屋敷林は散村の環境・景観面からも重要な要素と位置付けられているが、昭和30年代後半からの屋敷林の減少により、散村景観が大きく変化している。本研究では、砺波市内で「散居景観モデル事業」の対象集落となっている五郎丸地区を調査対象地と選定し、今日の屋敷林の構成および利用形態についての現地調査を行った。外観調査は地区内の45軒すべてを対象に、東西南北の4方向ごとにみた屋敷林の分布状況(面数、樹高、主な樹種、管理方法など)、庭の利用状況などを把握した。また、伝統的な屋敷林の形態を保った事例を選定し、毎木調査を行い、配置図を作成するとともに、屋敷林の利用・管理状況について聞き取り調査を行った。さらに、「散居景観モデル事業」など行政施策における屋敷林の維持のための事業実施状況を把握し、今後の屋敷林の保全に関わる課題、保全のあり方について検討した。
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奥 敬一
セッションID: B7
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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地域における人々の生活・生業が生み出す「文化的景観」は、文化財の新たなカテゴリーに加わってから10年以上が経過し、「重要文化的景観」選定地域も50を超えた。こうした文化的景観の捉え方は、共通の地域特性を持ったひとまとまりの視覚的範囲として設定されたコンテンツであることから、地域づくりへの活用にとっても大きな可能性をもっていると考えられる。しかし、景観を生み出した駆動要因である生活・生業の価値を重視し、普段は「見えない」部分が強調されることで、かえって来訪者や一般の生活者にとって景観の価値をわかりにくくしている面も否めない。文化的景観の価値を見る人々に伝え、地域に関わる動機付けを生み出すためには、景観の「直接目に見える部分」と「直接目に見えない部分」の双方を統合的に視覚化できる仕掛けが必要とされている。本研究では、そのような視覚的装置について、① 眺望・展望地点、② メディアに引用されるビジュアル、③ 野外での解説装置、④ 拡張現実、の4種類に整理して、その有効性や計画論を試みたい。
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川端 篤志
セッションID: B8
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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自然環境保全地域は,自然環境保全法に基づき,人の手の加わっていない原生の状態が保たれている地域やすぐれた自然環境をもった地域の保全を目的として全国に存在し,自然環境保全地域,原生自然環境保全地域,および各都道府県が条例により指定している都道府県自然環境保全地域がある。現在,IUCNの保護地域管理カテゴリリストにおいて,原生自然環境保全地域はカテゴリIa,自然環境保全地域はカテゴリIbに区分されているが,都道府県自然環境保全地域は,536地域すべてがカテゴリⅤに含まれている。我々は,都道府県自然環境保全地域の現状を知るべく,全国のいくつかの都道府県自然環境保全地域で実地調査した結果,地域で信仰されている神社や寺の叢林,天然記念物の生息地など,文化財を中心とした区域を指定している県も少なくなく,保安林や鳥獣保護区と区域が重複している地域もあることが分かった。保護地域管理カテゴリは,自然環境保全地域の管理目的を考慮して区分すべきである。さらに,各県に管理状況を聞き取り調査した結果,1970年代に多くの都道府県自然環境保全地域が指定を受けて以降,ほとんど管理されていないことも分かった。
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伊藤 太一
セッションID: B9
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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世界保護地域データベースによると、34075箇所の多様な保護地域がアメリカでは登録されている。国立公園システム等連邦レベルの保護地域の割合は少ないが、59箇所の国立公園の内、Ⅱが39箇所、Ⅴが海景中心に14箇所、除外されたホットスプリングスを除く5箇所はIbウィルダネスとしての登録に限定される。同様に87箇所の国家記念物においても、Ⅲ指定は33箇所に留まる。アメリカでは名称や土地所有、空間特性ではなく管理目的を中心にIUCNカテゴリを充てたことが理解できる。その一因として、国立公園局等の国家機関ではなく大学やNGOがこの登録作業をしていたことが考えられる。 なお、カテゴリIbはアメリカのNGOがIUCN保護地域管理カテゴリに導入することを要求したものであり、国立公園の場合道路沿いの地域を除外したゾーンとして30箇所ほど重複指定され、1964年のウィルダネス法の意図が反映されている。また、ガバナンスに関しては国立公園等においてもNPOとの共同管理の保護地域が多く、個人やNPOによって管理される保護地域もIUCNカテゴリに多数含まれている。
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遠藤 知里
セッションID: C1
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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わが国の幼児教育の方向性を示す「幼稚園教育要領」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」、「保育所保育指針」等では、子どもにとっての自然との関わりの重要性が明記されている。戸外遊びや自然体験は偶然や不確実性を多く含み、その体験プロセスは未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力を育む基礎となると考えられる。樹木は子どもにとって身近な自然であり、保育の質(子どもが心身ともに満たされ豊かに生きることを支える環境や経験の質)を高める重要な保育環境である。本研究では、保育内容としての「乳幼児期の戸外遊び・自然体験」に着目し、「安心して挑戦できる環境要件」の多面的理解を通して、自然体験の幼児教育への展開方法を検討することを目的とした事例検討を行う。静岡市内のS幼稚園を事例とし、園庭における「木登り」、「ターザンロープ」という素朴な遊びの観察から、幼児が「繰り返し試す」ことに高い集中力を発揮する姿、特に次の行動に具体的に繋げていく力を発達・深化させる姿を発見し、「身体-身体」×「自然-身体」関係に支えられて子ども自らが身体的思考力・想像力・創造力を育むプロセスを考察する。
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杉浦 克明, 舟羽 克輝, 早川 尚吾, 園原 和夏
セッションID: C2
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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都市部に住む児童は普段森林に触れる機会は多くない。そのような中,藤沢市,茅ヶ崎市,寒川町の2市1町で構成される湘南広域都市行政協議会が主催する湘南エコウェーブという活動がある。その活動は主に子どもに対し湘南の自然環境を伝えることにあり,その一つに「みんなで森を知ろう!」という企画がある。その企画は,日本大学生物資源科学部演習林内で水生生物や朽木に群がる昆虫を捕まえることで,森林とそこに生息する生物に興味を持ってもらうことをねらいとしたプログラムである。そこで,本研究の目的は,当日撮影した動画を分析し,森林内での活動において子どもが何に興味をもち,好奇心がどこに向くのかを明らかにすると共に効果的なプログラムの開発に役立てることである。事前に当日の活動範囲に自動撮影カメラを設置し,子ども行動や言動を記録した。その結果,発言内容の多くは水生生物や昆虫で,樹木に関する発言は極めて少なかったことから,子どもの関心は動く対象物に興味が向きやすいといえる。また,触覚や視覚に関する発言が多かったことから,体験活動は子どもの印象に残りやすいと考えられ,五感を使うことの重要性が示された。
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平山 大輔
セッションID: C3
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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子どもが森林に関心をもち森林の多面的機能や保全の重要性を理解できるようになるための最初のステップとして、小学校での取組みが重要である。本研究は、小学校で実施可能で、児童が主体的に探求することのできる森林教育の授業モデルを構築することを目的とし、樹木の二酸化炭素固定量の教材開発を行った。森林の一次生産力の推定に従来用いられてきた相対成長式をもとに、幹の周囲長と対応する二酸化炭素固定量の早見表を、樹木の生活型(常緑広葉樹、落葉広葉樹、針葉樹)ごとに作成した。また、この早見表を使って児童が校庭の樹木の二酸化炭素固定量を調べ、一人当りの一年間の暮らしから排出される二酸化炭素量と比較することで樹木の働きを学ぶワークシートを作成した。なお、この早見表とワークシートは、2014年発行の三重県の小学校の副読本に掲載された。小学校での実践として、2016年2月に、三重大学教育学部附属小学校6年生を対象に授業を行った。同11月には、三重県総合博物館への来館者の親子を対象とした実践を行った。事後のアンケート結果から、どちらの実践でもおおむね高い評価が得られたことが分かった。
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高橋 千尋, 比屋根 哲
セッションID: C4
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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小学校教育において、自然体験を通した環境学習は今後ますます重要になると考えられるが、環境学習が児童に与える影響について長期的な学習を対象とした事例は少なく、十分に明らかになっているとは言えない。そこで、本研究では宮城県東松島市立宮野森小学校の一連の森林環境学習に参加する3年生児童を対象に、学習がどのような影響を与えたのかを明らかにすることを目的として実施した。対象とした森林環境学習では、学校林をフィールドの中心とし、そこで暮らす生物を通して探究的に学ぶことをねらいとして、約1年を通して生物観察や調べ学習が行われた。本研究は、長期的で多様な学びを明らかにするため、児童が作成した作文や学習記録等のポートフォリオを中心に分析した。また、ポートフォリオ分析の結果を補うため、授業の様子を記録する参与観察調査、担任教諭に児童の様子を尋ねるヒアリング調査も実施した。調査の結果、多くの児童は授業や調べ学習で得た自然の知識だけではなく、探求的な意欲の向上も見られ、授業を通して新たな気づきや学びを得ていたこと、また、そのような成果がポートフォリオ等に表れる時期、要因は児童によって多様であることがわかった。
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蒔田 明史, 木幡 修也, 石沢 真貴
セッションID: C5
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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近年子供たちを取り巻く環境は大きく変化しており、その変化は子供たちの自然との関わりや自然への認識に大きな影響を与えている可能性がある。そこで、本研究では、①現在の小中学生、②その保護者の世代、③高齢世代、の異なる3世代に対し、少年期における遊び場所や森に対するイメージ等に関するアンケートを行い、少年期の自然体験が自然に対する意識形成にどう影響しているかを検証した。調査は、田園~山間地域である秋田県五城目町において、①地域の小中学校に依頼して全生徒(411人)と②その保護者、また、③高齢者については地域の健康講座参加者(98人)を対象におこなった。 その結果、世代を経るに従って少年期の自然体験は明らかに減少し、同時に森に対して怖い、危ないといった負のイメージをもつ者の比率が高くなっていた。しかし、小中学生でも、自然との関わりの多い子供たちでは9割近くが森に好印象を持っていた。 これらの結果をもとに、自然への健全な意識を育むためにどんな取組が必要かについて考えてみたい。
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柏倉 美沙
セッションID: C6
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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森林教育を行う上で、生徒が森林の諸科学の知識を用いて解決する学習活動を展開するためには、生徒の森林の研究内容に関する興味・関心を知ることが重要といえる。そこで、S県A市の中学3年生129名に対して、森林研究に関する興味・関心について、内閣府が2011年12月に実施した森林と生活に関する世論調査の項目のうち、森林への親しみ、森林に期待する働き、森林ボランティア活動への参加意欲、森林に行く目的の4つを調査した。あわせて、第129回日本森林学会大会の14部門の研究内容を示す文章を提示して、興味・関心のある研究内容を3つまで選択させた。調査の結果、中学生が森林に求める機能については地球温暖化防止が最も多く、防災に関する回答が少なかったこと、森林ボランティアの活動が「わからない」と答えた生徒が2割弱みられたことから、中学校での学習内容や都市住民としての森林との関わり方が影響していると考えられた。中学生が興味・関心を持つ森林研究については動物・昆虫や風致に関する内容を挙げる者が多く、森林への漠然としたイメージや学校行事としての宿泊体験学習での活動内容が影響しているものと考えられた。
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小西 伴尚
セッションID: C7
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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平成13年に抜本改正された「森林・林業基本法」では,森林・林業に対する国民の理解を深めることや,教育の為の森林利用の促進が位置づけられるなど,森林教育が注目されてきている。しかしながら,学校教育の中ではほとんど行われていないのが現状であった。また,次期学習指導要領では,今までの知識の暗記・再生からの脱却が求められ,主体的・対話的で深い学びの実現に大きく転換する時期であるため,次期学習指導要領を踏まえた森林教育のプログラムを作成すべきと考えた。プログラム作成の為の事前調査として,森林教育に対して主体的な生徒に対して,主体的になった理由を調べたところ,イベントを企画することの良さが明らかになった。そこで,人工林に関する森林教育のプログラムを三重中学校科学技術部の生徒自身が考える企画を考え実施した。発表では,作成したプログラムとその意図および作成者の変容,そして,そのプログラムを実際体験した生徒の変容について報告する。その中で,今回の場合,作成者・体験した生徒ともに成長がうかがえたが,森林プログラムを作るには知識が多く必要であり,支援が必要なことが示唆された。
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東原 貴志, 蔵治 光一郎, 井上 真理子, 大谷 忠, 荒木 祐二, 伊神 裕司, 渡邉 英二
セッションID: C8
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
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高等学校農業科の科目である「森林科学」では、森林の育成、保全と木材の生産について学習する。この科目では最初に、水資源の涵養や生物多様性の保全をはじめとする多面的な森林の機能を維持するための森林科学の意義を扱うため、初学者に対する指導に適した教材が必要とされる。本研究では、この科目を初めて学習する高校生を対象とした人工林調査と人工降雨実験の教材を開発した。2017年6月に高校2年生15名を対象とし、スポンジを用いた吸水力実験、人工降雨装置の組み立て、人工林の混み具合調査、人工降雨実験で構成される授業実践を行った。教材はほとんどが100円ショップで購入できる物品で構成され、高校生でも比較的容易に準備、作製できた。保水力の実験では計算手順がやや複雑で、計算ミスをしたり、実験手順を指示通りにできなかったりする生徒がみられた。人工林における調査ならびに実験では、森の地表面に水が浸み込んだり、地表面を水が流出したりする様子について興味を持ってよく観察しており、教科書に書かれている水資源の涵養や緑のダムなどの言葉の意味を少なからず理解できたのではないかと考えられた。
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安藤 愛
セッションID: C9
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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総合学科高校における森林教育について、井上・大石(2007)は「総合学科における森林・林業教育が今後それを一般向けに広めていく方向性を示す」としており、教育現場の実践報告が必要である一方、杉浦(2015)は高校生を対象にした実践例の少なさをあげている。しかし、森林教育は近年重視されているアクティブラーニングの要素を持つものと考えられ、今後さらに教育現場において実践されていくと予想される。そこで、本研究では総合学科高校における森林教育の実践報告と生徒の実習記録および参与観察からその現状を把握した。対象は筑波大学坂戸高等学校とし、科目は専門等の受講生を制限のない「自由選択科目」とした。屋外での授業展開として「わたしの木」等の体験的要素を取り入れた実践から考察を行った。さらに、屋内での授業展開としては映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」を題材としたロールプレイを取り上げた。特に当映画は林野庁が実施している「緑の雇用」がモデルであり、一般向けに林業や木材への関心を高めるきっかけとして注目されていたが、高校生を対象とした森林教育の教材として期待される効果について考察をした。
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崎尾 均, 本間 航介, 阿部 晴恵, 菅 尚子
セッションID: C10
発行日: 2018/05/28
公開日: 2018/05/28
会議録・要旨集
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森林環境教育を行う上で,あつかう森林の多様性が高いことは大きな利点である.新潟大学演習林は新潟県佐渡島の大佐渡山地の尾根上に位置しており,スギ・ヒノキアスナロや広葉樹の天然林,二次林やスギ人工林など異なる種類の森林がモザイク状に分布している.また,尾根や渓流,湿地など地形も変化に富んでおり,植物種の多様性も高い.冬に北西の季節風が卓越する尾根沿いには自然草原や牛の林間放牧が行われていた半自然草地も分布している.その上,森林から海までの生態系が河川を通して,わずか数㎞でつながっており,森里海の関係を学ぶ上でも最適な環境にある.大学生の実習や社会人研修において,このような多様なタイプの森林や草地が一定の地域に集中していることは,これらの構造や生物多様性を比較する上で,非常に効率的で環境教育の場として優れていると考えられる.育林や林道を扱う林業実習においては,スギ人工林を集中的に利用することが多いが,農学部の基礎的実習や他大学の共同利用実習,社会人研修においては,様々な生態系を総合的に学ぶことによって,幅広く生態系の仕組みを理解できると考えられる.
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