日本森林学会大会発表データベース
第129回日本森林学会大会
セッションID: P2-133
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学術講演集原稿
ヒメバラモミ遺伝資源林における設置7年後の生存率と成長
*勝木 俊雄大野 裕康井上 日呂登
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抄録

マツ科トウヒ属のヒメバラモミ(Picea maximowiczii)は、推定個体数が2,000以下と少ないことから、国の絶滅危惧II類に指定されている。これまで積極的な保全対策がなかったことから、大部分の自生地を管理する中部森林管理局によって、2010年にヒメバラモミ遺伝資源林が八ヶ岳の西岳国有林に設置された。ほぼ分布域全体から採取された134クローンの穂木から接木苗が増殖され、744本が遺伝資源林に植栽された。植栽7年後の2017年には、生存率80%、平均樹高228cmに成長し、ほぼ順調に生育していることが確認された。しかし、南アルプス区で2016-2017年の枯死率は1.9% y-1であり、このままの枯死率だと植栽時の372本から2050年に139本に減少することが予想された。また、消失した13クローンに加え、2050年までに7クローンの減少が予想された。こうした枯死要因には採取時の穂木の性質が大きく影響していると考えられた。したがって、現在遺伝資源林で成長している若木から穂木を採取すれば、より高品質の接木苗木の生産が可能であり、再増殖した苗木を遺伝資源林に補植することで、遺伝資源林の価値は高まると考えられた。

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