主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第130回日本森林学会大会
回次: 130
開催地: 新潟県新潟市 新潟コンベンションセンター「朱鷺メッセ」
開催日: 2019/03/20 - 2019/03/23
樹幹木部における水の輸送では、蒸散に起因する木部樹液内のテンションが重要である(凝集力―張力説)。強いテンション下では道管や仮道管はエンボリズムによって排水し空洞化するが、水分の供給があれば、その部位は再注水を経て通水が回復する。柔細胞類や木部繊維の再注水への関与を推測する報告はあるものの、発生の場やそのメカニズムは解明されていなかった。本研究ではクスノキを材料として、排水した道管への再注水のプロセスを機能解剖学の手法によって検討した。クスノキの切り枝に乾燥処理を施して強制的に排水させ、葉を取り除いた状態で、枝の基部を一定時間色素液に浸して吸入させた。色素液吸入量の測定とともに、排水した道管とその周辺組織への水分吸入の過程を光学顕微鏡観察により追跡し、どの細胞が排水した道管への再注水に寄与しているのかを、可視化して確認した。その結果、軸方向柔細胞および放射柔細胞の細胞壁と内容物、道管の壁孔と細胞壁の染色を確認した。道管が排水して水柱が途切れた場合には、軸方向柔細胞および放射柔細胞を介した道管内腔への水の移動があるものと推測された。