日本森林学会大会発表データベース
第130回日本森林学会大会
セッションID: P1-090
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学術講演集原稿
低コストで爆発的に成長するブナ根系:異なる産地の稚樹に共通の生き残り方
*黒澤 陽子森 茂太山路 恵子吉村 謙一
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抄録

樹木の成長は根系と地上部の呼吸(エネルギー代謝)を通した相互作用によって維持される。一方で、根系/地上部の重量比の変化は環境変動に応じた適応現象として考えられている (Bloom et al. 1985)が、個体が環境から受ける影響やその程度は個体サイズとともに変化すると予想される。従って、地上部/根系の呼吸を実生~成木まで測定・評価することは、樹種特性を広い視点で理解するための重要な指標となる。本研究は、ブナの実生期から成木までの成長特性を個体生理学的な視点から理解することを目的として、複数の地域のブナ実生から成木まで346個体の地上部と根系の重量と呼吸を測定した。この結果、発芽後2年間は根表面積当たりの根呼吸の約1/10までの急速な低下にもかかわらず、根表面積が個体表面積の約82%を占めた。この低コストで急速な根系成長は発芽~成木の成長において実生期だけの現象であり、異なる産地の稚樹に共通の傾向であった。この現象は、実生が低コストで効率的に乾燥枯死を防ぐ適応現象であると同時に、光合成能獲得に必要な栄養塩類の蓄積を促進して成木までの成長を牽引するプロセスであると考えられる。

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