日本森林学会大会発表データベース
第130回日本森林学会大会
セッションID: P1-163
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学術講演集原稿
森林流域からの放射性Cs流出機構の研究: SSの流出と役割について
*川井 拓哉大手 信人小田 智基二瓶 直登和田 敏裕
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キーワード: 森林流域, 放射性Cs, SS, 水文過程
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抄録

原発事故後、福島県の森林では抜本的な除染は行われておらず、降雨イベントの際に放射性Csが流出する状態が続いている。森林が飲料水・農業用水の水源であることを考慮すると、流域内の放射性Csの移動メカニズムをとらえることは重要である。森林域から農耕地に続く領域には農業用の貯水池が多く存在し、放射性Csを含む土砂が流入・堆積している。本研究では、福島県北部の中山間地におけるため池で、池底堆積物の深度別137Cs濃度、堆積量、池水中の溶存態・懸濁態137Cs濃度を調査した。また、ため池上流部の森林域における粒子状浮遊物質・137Csの流出量の観測データと本調査の結果を比較し、ため池における137Cs収支を明らかにした。その結果、137Csの堆積濃度と堆積量はため池とその集水域の特性により異なるが、137Csをトラップする効果は大きくないことが示唆された。池水中の溶存態・懸濁態137Cs濃度は、現在の平常時の渓流水と同程度に低かった。ため池に137Csを保持する粒子状浮遊物質が堆積するのは平常時であり、大規模降雨イベントの際には、大部分の土砂は蓄積せず、流下させている可能性があることがわかった。

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© 2019 日本森林学会
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