日本森林学会大会発表データベース
第130回日本森林学会大会
セッションID: B9
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学術講演集原稿
立山の自然景観に対するヒューマンインパクトと保全
*大宮 徹
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抄録

立山は、地獄谷、弥陀ヶ原、浄土山などの地名が示すように、人手が加わらぬ荘厳な自然景観を地獄・極楽のイメージになぞらえて、古くから人々の信仰を集めてきた日本三霊山の一つである。多くの修験者や後には一般の登拝者が全国から訪れ、明治以降は近代登山が幕開けし、自然環境に対するヒューマンインパクトが累積してきた。加えて戦後になると大掛かりな観光開発が進められ、景観保全についての意識が高まり、その課題は現在も共有されている。そこで、過去から現在までの主要な登山道などの総延長と、登山道や施設などの占める面積を指標にしてインパクトの累積をたどった。その結果、戦後の観光開発は面積では近世以前の23.5倍(平方根で約4.8倍)に相当するインパクトであったが、総延長の距離では2.6倍となり、ルートを限定することによって主に遠景の景観を保全する指向が示された。山岳景観の保全にあたっては、遠景から近景にわたる大きな空間が対象となり、地形や生態系と人による利用との地理的関係を把握することが必須である。そのため、地点ごとの履歴を地理空間データとして記録し、多面的な尺度でインパクトの増加を防ぐ保全推進に資するべきと考える。

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