日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: E15
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学術講演集原稿
高知県安田川山希少個体群保護林におけるトガサワラの成長と更新
*酒井 敦安藤 暁子奈良 一秀
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キーワード: 枯死率, 直径成長, 山崩れ, 稚樹
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抄録

絶滅危惧樹木トガサワラの保全に資するためトガサワラ個体群の8年間の動態を調査した。高知県馬路村の安田川山トガサワラ希少個体群保護林(面積4.3 ha)は1912年にスギ、ヒノキ人工林として造成されたが、トガサワラが多く成立したため1973年に保護林に指定された。保護林は傾斜35~45度の急傾斜地にあり、局所的に地すべりが発生する。ここで2011年と2019年に毎木調査(胸高直径)を行った。2019年にはサイズの異なる35本の立木(胸高直径12.9 ~ 86.5 cm)から成長錘コアを採取した。2011年には395本の生立木があり、2019年は352本だった。2011年と2019年の直径階分布はどちらも20~30 cmにピークがあったが、8年間に10~20 cmの径級は半分まで本数が減り、50 cm以上の径級では本数が増加していた。このことから新規加入個体はなく、径級の小さい個体が枯死していることが示唆された。成長錘コアを分析したところ、トガサワラの齢は50年から95年以上であり、80年生を中心にピークがあるが、それより若い個体も断続的に加入していたことが示唆された。80年前は造成した人工林が27年生であるが、その時期に地すべりが発生しトガサワラの侵入が促されたと考えられた。

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