主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
本研究では、土壌環境が異なる6カ所の森林において、コナラ成木の樹冠内における葉の特性と食害の鉛直分布の関係を解明することを目的とした。2019年7月にコナラ樹冠内の5つの高度から葉を採取した。採取した葉の食害面積の割合とその鉛直分布を算出し、葉の特性との関係を調べた。養分状態に関わる葉の特性として、一次代謝産物の糖、デンプンおよびタンパク質の濃度を測定した。また、食害に対する防御機構に関わる葉の特性として、細胞壁濃度および二次代謝産物のフェノール化合物と縮合型タンニンの濃度を測定した。調査したいずれの森林においても、コナラの葉の食害面積の割合は樹冠内の位置によらず一定であった。一方、葉の特性には鉛直勾配が認められ、樹冠上部から下部にかけて葉の細胞壁濃度は増加したが、二次代謝産物の濃度は減少した。しかしながら、葉内物質の濃度およびその鉛直勾配と土壌の窒素濃度または水分量との間に明確な関係は認められなかった。以上のことから、土壌環境が異なっても、コナラの樹冠内における葉の特性は同様な鉛直分布を示すことが明らかになった。また、樹冠位置によって食害に対する防御形態が異なる可能性が示唆された。