主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
チシマザサはササ類の分布北限をなす。稈や葉は数回の越冬を行い、表皮や維管束などの一部組織を除き、生組織の多くが深過冷却で耐寒するユニークな耐寒戦略を持つ。このため植物体内の水分の凍結や過冷却を制御する機構の存在が予想される。植物の耐寒戦略として広く知られる細胞外凍結や器官外凍結では、細胞間隙や組織表面での氷晶形成を助ける氷核活性物質の関与が考えられる。しかし、植物由来の氷核活性物質の報告例はほとんどない。そこで、チシマザサの葉と稈を季節ごとに採取し、組織間等における氷核活性物質の存在と、その物理的、化学的性状を明らかにした。チシマザサの稈と葉身を浸漬減圧後、遠心することで組織内のアポプラストおよび表面に由来する抽出画分を得た。本画分に対し、濾過処理、加熱処理、エタノール処理、タンパク質変性剤処理などを行ったのち、純水に添加、凍結温度を測定することで氷核活性を調べた。その結果、初霜後-積雪前および積雪下のチシマザサは、氷核活性のあるタンパク質が含まれていることが初めて確認された。また、氷核活性物質はエタノール耐性を有し、積雪前後や稈と葉身によって物質サイズや性質が異なった。