主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
本研究では、福島県浪江町の高沈着量地域に位置する森林流域を対象として、湧水及び渓流水の流量を観測するとともに、湧水・渓流水・土壌水に含まれる溶存態セシウム137濃度及び各種溶存イオン濃度を測定した。また、粗大有機物と渓流水中の浮遊砂の懸濁態セシウム137濃度を測定した。それらの観測データに基づいて、渓流水中の放射性セシウム濃度の形成メカニズムを解明することを目的として研究を行った。調査期間は2018年6月から2019年12月の約1年6か月間とした。観測結果から、春から夏にかけて気温の上昇とともに渓流水中の溶存態セシウム137濃度が増加し、夏には流量の増加とともに溶存態セシウム137濃度が減少する傾向が認められた。冬季には微小な増加傾向が観測された。渓流水と土壌水の溶存態セシウム137濃度は正の相関を示した。さらに渓流水の溶存態セシウム137濃度は、湧水点から下流方向に向かって増加する傾向を示した。以上の結果から、渓流水の溶存態セシウム137濃度は季節変化を示し、流量増加による希釈効果や、渓流水が流下する過程での土壌水との混合、林床や河道に堆積した粗大有機物からの溶出の影響が示唆された。