主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
固定調査区のデータに基づく森林群集の動態研究は盛んに行われており、日本全国のさまざまな気候環境と立地環境に成立している群集間での広域的な森林動態の比較が可能となっているものの、一方、気候環境は同程度だが立地環境の異なる地域内の複数の森林群集の動態を比較した試みは立ち遅れている。そこで本研究は、青森県白神山地の尾根部に位置する高倉森(標高約800m)と渓流沿いのサンスケ沢(標高約250m)に設置された固定調査区(それぞれ1.4haと1.14ha)において、ブナ天然林の群集全体と主要構成樹種の個体群の動態を調査した。10年間の高倉森における成木(胸高直径5cm以上の幹)の群集全体の死亡率は2.56%/年、加入率は1.57%/年であった。同様に、9年間のサンスケ沢における成木の群集全体の死亡率は2.40%/年、加入率は0.98%/年であった。また、主要構成樹種であるブナに着目すると、加入率は高倉森(0.60%/年)とサンスケ沢(0.62%/年)で同程度であったが、死亡率は高倉森(0.94%/年)よりもサンスケ沢(1.33%/年)で高かった。さらに、階層ごとの死亡状態を把握するとともに、新規加入の空間パターンを分析し、森林動態の立地間の違いを明らかにする。