主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第132回日本森林学会大会
回次: 132
開催地: 東京農工大学によるオンライン開催
開催日: 2021/03/19 - 2021/03/23
熱帯林減少を止める取組が、気候変動緩和策として注目され、国際的に推進されている。しかし、当初期待されたほどの成果に至らず、地域社会への影響など懸念の声もある。そこで、私たちの25年間の実証研究と世界の先行研究の成果を用いて、森林減少の仕組みを分析した。その結果、発生メカニズム「高い貧困率、高い農業地代(農業の土地収益性)、高い森林率の3条件が揃うと、森林減少が発生する」と制御メカニズム「低い貧困率、低い農業地代、低い森林率のいずれかの条件が存在すると、森林減少が抑制される」を明らかにした。両メカニズムは論理式で示され、後者は前者の対偶である。これをもとに対策を検討した結果、1.現行の対策(保護地域の設置拡大、農地開発の停止、農業分野への規制など)は、農業地代を下げる対策が主流である。2.農業地代低下策は、即効性があるものの、高い代償を必要とし、当該国に経済打撃と貧困拡大のリスクが高く、持続性が低い。3.貧困削減策は、森林減少を止める効果的かつ持続的な解決策となりうる。世界の森林減少対策は抜本的変革が求められており、対策の主軸を農業地代低下策から貧困削減策へと移すことが必要である。