森林と大気間のCO2交換量の長期モニタリングは,気候変動などの環境変化に対する森林の応答特性を評価するうえで重要である。筆者らは,今後予測される気候変動に伴う気温上昇により分布確率の低下が懸念されているブナ(Fagus crenata)の環境応答特性を実証的に評価することを念頭におき,ブナが優占する冷温帯落葉広葉樹林を対象に,森林と大気間のCO2交換量を精度高く測定できる渦相関法を用いたフラックスの連続観測を実施している。本研究では、2015年から2021年に実施した渦相関法により求められるCO2フラックスの季節および年々変動について報告する。調査地は群馬県利根郡みなかみ町に位置する日本大学水上演習林であり,ブナが優占し、ミズナラやコナラ等の落葉広葉樹が混在する平均樹高15 mの二次林である。日中のCO2フラックスについて、展葉開始時期である5月上旬頃から、森林側へCO2を吸収する傾向が各年共通でみられたが、着葉期である夏季では各年の気象条件によりCO2交換量に違いがみられ、光強度および気温の低下や、土壌水分の著しい低下により大気側へCO2を放出する傾向が示された。