日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: P-044
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学術講演集原稿
日本における樹木葬の普及要因
*尤 暁安石橋 整司安村 直樹齋藤 暖生
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キーワード: 樹木葬, 里山, 家族制度
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抄録

近年、新しい葬送の形として樹木葬が注目を集めており、新規購入される墓地の中では

一般墓を抜いて樹木葬墓が一位となったという調査結果もある。そこで本研究では、日

本で樹木葬がここまで急速に普及するに至った要因について検討した。戦後の日本は高

度経済成長期に入って地方から都市への人口移動・人口集中が急激に進み、都市部にお

ける墓地の需要が激増して墓地不足の問題が顕在化した。さらに、団塊世代が高齢化し

墓地不足問題がさらに深刻になることから樹木葬を含む新形式の墓地が現れた。一方で

、経済成長にともなう環境問題の発生が日本人の環境への関心を喚起した。墓地におい

ても「美しい自然に帰る」という自然葬の価値観が認識されるようになり、樹木葬にポ

ジティブな自然のイメージをもたらすことで関心が高まった。さらに、少子高齢化と墓

地価格の高騰が進んでいる中、墓地の継承を必要とせず価格も比較的低い樹木葬への需

要が継続的に高まっている。このように、戦後の日本で進んだ人口や土地に関する社会

的な背景、自然に親しむ考え方の広がり、そして「家」に対する意識の大きな変化など

が要因となり、樹木葬の急速な普及につながったと考えられる。

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