日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: P-235
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学術講演集原稿
太平洋側型ブナと日本海側型ブナ成木樹冠内の葉の可塑性の違い
*上村 章原山 尚徳石田 厚
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キーワード: 可塑性, LMA, ブナ, 水分特性, 光合成
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抄録

ブナ (Fagus crenata Blume) は、日本の冷温帯に優占し、太平洋型と日本海型2つのエコタイプを持つ樹種である。太平洋型エコタイプである勿来の個体は、日本海型エコタイプである安比の個体より、高い蒸散要求にさらされる。我々は、ブナの個体内の葉の特性のバリエーションを調べた。この研究の目的は、どのように葉の形態と葉の生理生態学的特性が大気の乾燥状態に対応するために関係し合っているかを明らかにすることである。勿来陽葉は、安比陽葉と比べて厚い葉身、葉身内に大きな維管束鞘、小さな維管束鞘延長部包囲面積を持った。勿来陽葉のLMAは安比陽葉の1.74倍だった。勿来陽葉は、日中、葉の膨圧を維持しつつ、より低い葉の水ポテンシャルを持つことができた。勿来の高い蒸散要求状況に対する葉の形態的順化は、結果的に、葉身内の窒素濃度、N/C率を減らした。そして、乾重当たり、窒素当たりの同化速度を減らした。我々の研究は、葉レベルの乾燥耐性は、葉の水分特性だけでなく形態レベルでも変化を導くことを示す。これは、乾燥耐性に関して葉の水分特性と葉の形態あるいは葉のガス交換の間に連携があることを暗示する。

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