日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: P-295
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学術講演集原稿
シカ食害により変化した森林構造がもたらす地上部・地下部炭素蓄積量の違い
*阿部 隼人久米 朋宣片山 歩美
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抄録

九州ではシカの採食が下層植生の減少、不嗜好性樹種の増加、上層木の枯死等、森林の植生構造を変化させており、炭素量を減少させる可能性がある。本研究は九州大学宮崎演習林で採食の軽度な林分(LG)と過度な林分(HG)の炭素量(上層木、下層植生、落葉、落枝、枯死木、細根)を比較した。HGは下層植生の無い林分(HG-nu)、不嗜好性低木の優占林(HG-ud)、ギャップ地(HG-gap)に分けた。総炭素量はLG(13423.7 g C m-2)、HG-nu(12246.8)、HG-ud(6005.0)、HG-gap(5128.7)の順に大きかった。これは主に上層木の炭素量の差に起因し、HG-ud(5118.2 g C m-2)とHG-gap(2028.9)の値は、LG(10771.4)より50%以上少なかった。下層植生の炭素量はHG(3.5~81.1 g C m-2)がLG(634.5)より83%以上少なかった。また、落葉,落枝の炭素量はHG(計186.1~372.1 g C m-2)がLG(535.4)より31%以上少なかった。落葉,落枝量は上層木・下層植生の量と正の相関があった。枯死木と細根の炭素量はHG-gapを除き処理間で差は無かった。以上から、シカによる植生変化は、植物バイオマスの損失とそれに続く微細枯死物の減少に起因する地上部炭素量の低下を引き起こした。

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