日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: A15
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学術講演集原稿
北陸地方の山村における伝統的な農業の存続状況の解明
*上田 隆太郎原田 一宏
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抄録

 石川県白山市白峰地区と福井県勝山市北谷地区で現在も栽培されているカマシ(シコクビエ)についての事例を示す。石川県、福井県、岐阜県に跨る白山の西麓では、出作りという日本の山村生活の象徴と言われた生活が営まれてきた。その出作り地を含む調査地近辺の山村では、カマシと呼ばれる雑穀が栽培、利用されてきた。本研究では、北陸地方の山村を事例に、カマシ栽培という伝統的な農作物がどのように存続しているのか明らかにし、地域でのカマシの存在の位置付けを示すことを目的とする。

 調査の結果、カマシの栽培事例は6例が見られ、個人や地域の団体など多様な栽培主体の存在が確認できた。また、栽培目的はお土産への加工、自家消費、種取り、地域でのイベントでの使用など多様な目的での栽培が明らかとなった。さらに調査地では、地域外の企業へのカマシの売買や大学と連携して行われたプログラムの実行など、カマシを介した関係性が構築されている様子が見て取れた。また、カマシ栽培は2調査地で異なる意味を持っており、今後の継承のためにはその位置づけに即したアプローチが必要であることが示唆された。

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