日本林學會北海道支部講演集
Online ISSN : 2433-0825
低木類の浸食抵抗について
東 三郎村井 延雄
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1963 年 12 巻 p. 4-7

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抄録

山腹の植生カバーが表面浸食を防ぐことはすでに認められているが,このような植生カバーを裸地斜面に再現しようとする植生導入の過程においては,表土移動・落石・雪食などにより,導入樹の崩落がおこる。これに似たような現象は,積雪地帯の崩壊地縁辺部,荒廃林地・皆伐造林地において小径木の崩落による崩壊地発生・拡大などの場合にもみることができる。一般に樹木は根系の発達により,土壌を緊縛する力をもつとされ,とくに砂防樹種の備えるべき要件の一つに根系発達のはやいことがあげられている。これまで根系の土壌緊縛力について調べられたものは少なく,開拓地,造林地の伐根作業,集材機等の根株のアンカ強度測定,多雪地帯のボイ抜根強度測定などがあるが,いずれも大径自生木を対象としているために,山腹植生工の導入樹幼令時代の緊縛力の推定には適用できない。この緊縛力は樹木に加えられた外力に対する抵抗力としてあらわすことができる。もちろん樹種・樹令・根の生育状況・土質・地形などに関係が深く,一概に平均的な数値を求めることは困難であるが,まず浸食形態に応じた抵抗力をみるために,樹種と土地条件を限定して観察・測定した。この試験は「北海道大学天塩第2演習林トイカンベツ川流域保全の実態調査」の一部である。器械の不備,試料選定の関係上,現地山腹での試験を行なうことができなかつたために,演習林実験苗畑(札幌市)において試験した結果についてのべる。この試験のために終始協力して下さつた演習林の関係職員に厚く御礼をのべる。

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© 1963 北方森林学会
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