日本林學會北海道支部講演集
Online ISSN : 2433-0825
流域保全における森林への期待
村井 延雄
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1965 年 13 巻 p. 34-38

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抄録

北海道第2期総合開発計画は,道民の経済と文化的生活の安定および高度化を目ざして,つぎの段階へ上ろうとしている。このようにして進められている総合的な土地利用と開発計画は,いわば人工的な自然の均衡の破壊と変更であるから,その進行程度に応じて人工的な修正手段が伴わなければならない。それがなおざりにされると思いがけないとき思いもよらない人々にとんでもない災害をかぶせることになる。したがって,流域の開発と保全はいつも平行して進められなければならない。自然のバランスが破られておこる災害には,よってくるところから自然災害(天災)と人工災害(人災)というようによんでいるが,この天災と人災は素因と誘因など相互作用でからみ合っているので,判然と区分できないのが現実の様相であろう。たとえば急斜地の開墾,風衝地の皆伐,降雨中の貯水ダム放流,河川敷内の住宅占居,軟弱地盤上の高層建築など,簡単に異常気象とか地盤変動による天災とはいいきれない人災的要因をふくんでいる。かって土地利用による地表のひずみを修正するために人間社会生活の保全についてのシンポジウムが1955年に北米プリンストンで開かれたが我国でもこのような災害の実態を究明して,その予防と防御対策を進めるために,昭和39年9月初旬,名古屋大学において全国から多数の自然科学系研究者が参集して災害の基本理念,災害の規模と災害の予知について熱心な討議を行なった。その成果はいずれ年ごとにある程度の実りをもって,国土保全に対する社会の要請に応えることになるとおもう。ここでは森林地帯の流域保全問題を専攻するひとりとして,流域保全について水源地帯における土砂生産,出水調節と水資源確保などと森林の関係について既往の研究報告を展望し,この種の問題の現段階にたって将来への方向に示唆するものを僅かでも引き出してみたい。

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© 1965 北方森林学会
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