日本林學會北海道支部講演集
Online ISSN : 2433-0825
28. カラマツの空中トリキとサシキ試験(会員研究発表講演)
坂本 武
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1973 年 21 巻 p. 119-129

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抄録
昭和42〜45年の4年間,カラマツのツギキクローン(樹令10〜14年生)及び実生親木(12〜14年生)を用い,親木の個体別に空中トリキと一部サシキ試験を行った。(1)NAA5〜20mgTalc処理によって多くの親木個体で容易に発根させることが出来た。ホルモン濃度は6月トリキでは低濃度,7月では高濃度処理がやや良かった。剥皮については完全剥皮の場合はホルモンの濃度間に違いが少なかったが,半剥皮,長さ3cm2ケ所,無剥皮では高濃度処理が良く効いた(図-3)。(2)剥皮処理では半剥皮がよく,完全剥皮よりも(図-2)枯死がなかった。さらに簡単な方法として「長さ3cm2ケ所」及び無剥皮処理でも発根することがわかった。(3)樹種別の発根率をみると,ツギキ親木では朝鮮カラマツ.日本カラマツ,グイマツの順によく発根したが,実生親木では,産地や樹種の特性によるのかグイマツ,朝鮮カラマツ,日本カラマツと発根順位に違いがみられた。(4)根は短枝から出やすく(48.3〜53.3%),完全剥皮より半剥皮の場合やや多かった。切り口からの発根は逆に完全剥皮で多かった(表-3)。(5)4〜7月上旬頃まで良く発根したが,それ以後は急激に低下した。(図-5)更に得苗率の向上等を考えると5・6月頃の早い時期のトリキが良いと考えられる。(6)樹高6〜8mの親木に対するトリキ位置は,高さ1〜1.5mの下部よりは3〜4mの上部で,光のよく当る枝の方が発根率が良かった(図-6)。(7)44〜45年のトリキで発根しやすい個体としにくい個体のあることが確かめられた(図-7)。(8)4年間の短かい期間でも,年令の増加と共に発根率の低下する傾向がみられた(表-4)。(9)トリキ苗の養苗に於ける得苗率は一般に悪く,ツギキ親木でこの傾向が著しかった。しかし,活着した苗木の生育は1〜2年間は思わしくなかったが,3年目には非常によく生長した。(10)サシキはトリキに比べ発根率が悪く,両老の発根性を比較検討出来なかった。(11)サシキはツギキ親木より,実生親木の方が発根しやすい傾向を示した(図-2)。(12)サシキで良く発根した個体でも,トリキで発根しやすいとは限らず発根性は一致しなかった。
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© 1973 北方森林学会
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