2000 年 12 巻 3 号 p. 417-424
知覚工学における(アナログ)残像現象をディジタル動画像処理で取り扱うために, 移動物体の運動情報を一枚の静止画像で表現する疑似残像画像の概念を提案し, それを実時間で効率良く求める方法を示す.さらに, カラー動画像における輝度・色相・彩度各成分の疑似残像画像をファジィ推論の入力情報とし, あらかじめ用意したカラー動画像各成分と移動物体の動きとの関係を表現する15個のファジィルールを用いて, 代数積・代数和合成・重心法によるファジィ推論を適用することにより, 動画像中の移動物体検出を行う.ここで, 背景が固定ではなく連続的に移動する場合でも, 目的とする移動物体を検出するために, 背景動情報抑制フィルタを提案し, ファジィ推論の前処理に用いている.本移動物体検出法は、従来の差分画像や相関演算を用いる手法と比べ, 数フレーム分の位置ずれを生じる問題を解決し, 高解像度で移動物体を検出できる点で評価できる.具体的実験例として, 一般道路上を走行する車両の車載カメラで撮影した動画像から, 対抗車両を移動物体として検出した結果を示す.これは, 将来的にはITSにおける走行車両検出や走行環境認識の実時間処理等を目標とした基礎実験である.