抄録
本論文では、人工生命とファジイ推論を用いた避難行動に関する研究を行う。避難行動に関する従来の研究の多くは避難者にあらかじめ避難経路が与えてあり、時々刻々と変化する火災状況に応じて避難経路を選択できないものが多かった。そうした中、横山ら[15]は状況に応じて避難経路を選択できるポテンシャルモデルを提案した。しかし、実際の避難行動では誘導員による避難誘導があることや、高齢者などの身体的能力の劣る人が混在しているなどの問題がある。また、避難者の心理状態も避難行動に大きな影響を与える。本論文では、横山らのポテンシャルモデルを基に、高齢者や誘導員などの役割の異なる避難者を人工生命個体として、また危険意識などの心理状態をファジイ推論で扱うことにより、個体の群行動を用いた新しい避難行動モデルの提案を行う。モデルの特徴としては、個体間の相互作用により精確で複雑な避難行動が扱えることや、避難行動に関する様々な知見が得られることが挙げられる。計算機実験によって、提案モデルの有効性を確認している。