2020 年 24 巻 2 号 p. 40-43
すべてのBPSD(認知症の行動・心理症状)を緩和させるケア方法が示されていない昨今,1つひとつの事例の積み重ねが,認知症をもつ本人や家族,そしてケアするスタッフのQOL(生活の質)向上につながり,ひいては認知ケアの質の向上に寄与できると考えた.今回,入院時にはBPSDが顕著であったが,本人の思いを受けとめ,心地よく過ごせる時間を増やす関わりをケアに導入した結果,BPSDが緩和した高齢のアルツハイマー型認知症患者について振り返った.患者の心地よさに焦点を当てて考えることが患者の思いを読み解くヒントになること,心地よく過ごすためにはどうしたらよいかを考えることから,アプローチの手がかりが得られることがわかった.BPSDを示している患者に対して,一見遠回りに感じられるケアであるかもしれないが,患者の思いに寄り添い,心地よく過ごせるような関わりが有効な場合があるという示唆を得た.