ファジィニューラルネットワークの多属性意思決定問題への応用

抄録

近年、ファジィ理論とニューラルネットワークの融合に関する種々の研究がなされている。ファジィ推論にニューラルネットワークを応用する研究はこの融合研究の重要な分野の一つである。本論文ではこのようなネットワークをファジィニューラルネットワーク(Fuzzy Neural Network : FNN)と呼ぶ。FNNはニューラルネットワークの学習機能によりファジィルールの同定およびメンバシップ関数の調整を自動的に行うことができる。筆者らはこれまでに、ニューラルネットワークの構成を工夫し、学習後のネットワークから容易にファジィ推論ルールを把握できるファジィニューラルネットワークを提案してきた。菅野が提案したファジィ測度は、多属性意思決定問題における人間の評価のあいまいさを表現でき注目されている。しかし、同測度は人間の持つ主観的尺度の平均値しか表現できず、人間の評価モデルを良く同定できるとは限らない。本論文では、多属性意思決定過程のファジィモデリングに筆者らの提案してきたFNNを改良した新しいFNNを用いることを提案する。本FNNは、ファジィルールの前件部に対応するネットワークにて評価値の空間をファジィ分割し、後件部に対応するネットワークにて各ファジィ部分空間ごとの評価尺度を加重線形式で同定する構成を持つ。本FNNによれば属性の評価値とともに変化する各属性の重視度合を同定できる。本論文のFNNの有効性を示すために、評価モデルの同定実験を行った。