抄録
多層型ニューラルネットワークの学習能力によりエキスパートが実際に制御を行ったデータから自動的にファジィ推論ルールを同定する手法がいくつか提案されているが, それらの多くは前件部メンバーシップ関数の組み合わせのすべての推論ルールを同定するために, その中には不必要なルールが存在する可能性があると考えられる.また, 入力変数, 前件部メンバーシップ関数の数が増えると, 同定されるルールの数は指数関数的に増大してしまい実用的なものではなくなってしまうという問題をもっている. 本論文では, この問題を解決するために, ファジィ推論の過程を表現したファジィ・ニューラルネットワークにおいて, 学習途中に必要な推論ルールに対応するユニットを逐次組み込んでいき, 最終的に有用な推論ルールのみを獲得する新たな手法を提案する.本手法における推論ルールの生成方法は人間が試行錯誤的にファジィ推論ルールを作成していく過程を模擬したものであり, 重要なルールから先に生成していき, それらのルールだけでは制御対象の特性が十分に表せない場合に欠落していた推論ルールが順次追加されるようになっている.また, 学習を行う推論ルールの後件部実数値の初期値の決定法も新たに提案しており, それにより学習の高速化がはかられている.さらに本論文では, この手法を2次遅れ系の制御問題および移動ロボットの障害物回避問題に適用することにより, その有効性を明らかにしている.