抄録
1982年に Z.Pawlak によって提案されたラフ集合により, 属性による対象の分類とエキスパートによる分類との整合性が議論できる.Z.Pawlak らは, 対象とその属性値に関するデータを情報システムと呼び, ラフ集合の概念に基づき属性数を減らす研究を行っている.情報システムの代表的な例としては, 患者(対象)と各検査項目(属性)の測定値(属性値)に関するデータベースがある.田中らは, エキスパートにより与えられた対象の分類に基づき属性数を減らす方法を提案し, 提案手法により医療診断用ファジィエキスパートシステムを構築している.田中らのファジィエキスパートシステムでは, 患者の判別を行う場合に, その患者の検査データと最も適合するファジィルールのみが用いられる.このため, 検査データに欠落値がある場合や, 異常値がある場合には, 誤判別されることが多い.そこで本論文では, この点を改良するため, 検査データと最も適合するファジィルールだけではなく, 全てのファジィルールを用いて判別を行う新しいファジィ推論の方法を提案する.提案手法では, 各クラスに対する検査データの適合度を用いて判別が行われる.さらに本論文では, 田中らにより用いられた肝臓病の診断に提案手法を適用することにより, 提案手法の有効性を示す.