抄録
X線や電磁波などを対象物に投影して得られるデータより対象物断面の情報を得ることは, Computer Tomography(CT)と呼ばれ, 医療, 非破壊検査や地下資源探査などに広く利用されている.対象物の投影データより対象断面を画像化する手法は, 従来よりラドン変換・フーリエ変換を利用した方法が完成されている.しかし, 投影データが少ない場合や投影方向に制約がある場合には, 断層画像をうまく再現できない.本論文では, 駆動源と検出器の設置に制約があるため得られる投影データが限定される場合に, なめらかに変化する対象断面の媒質分布を再構成し, 可視化するニューロ・ファジィ手法を提案する.本稿でのニューロ・ファジィとはファジィモデルに勾配法を適用してニューラルネットのように学習するもので, メンバシップ関数にはガウス基底を用いる.このファジィモデルは, 円形基底関数の一種であり, 三層のニューラルネットワークとも見なされている.提案法ではまず断面の媒質分布をニューロ・ファジィモデルで表す.そして光線モデルを仮定し伝播路に沿った線積分を求める.このファジィモデルの線積分は非常に簡潔に表現される.次に, 得られた投影データを教師データとしてニューロ・ファジィモデルの各パラメーターの値を最急降下法により学習(変更)する.学習後のファジィモデルで表された対象断面上の媒質の分布を3次元グラフィックスにより可視化する.