抄録
最短経路問題のようなネットワーク問題では, 従来所要時間やコストなどを確定値として取り扱ってきたが, 現実にはこれらの値を確定値で表現するよりむしろ, 「だいたいこれくらい」というようなあいまいな値で表現するほうが適切な場合が多い.一方, この最短経路問題においても単に単一目的関数である最短距離を求めるだけでなく, 到達時間やコストなども同時に考慮する, いわゆる多目的計画問題を取り扱う必要性が生じることを無視できない.本論文では, このあいまいさを表現するために三角型ファジィ数を導入し, 時間とコストのような二つの目的関数を考慮して最良な妥協経路を求める方法を提案する.その第一段階として, まず提案する解法の基礎となるネットワーク・シンプレックス法を取り上げ, ファジィ係数を伴う最短経路問題に適用できるように拡張することを試みる.次に, この拡張されたネットワーク・シンプレックス法を利用することにより, 本論文で提案するファジィ係数を伴う二目的最短経路問題のための新しい解法を示す.更に, 数値例を用いて提案する手法の有効性を確認する.