日本ファジィ学会誌
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正規母集団からのファジィ区間データに基づく近似的ベイズ区間推定
吉川 伸一奥田 徹示田中 英夫
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1995 年 7 巻 4 号 p. 786-808

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抄録

人間の意識や心理などを含む質的なデータは, 人間の主観的なあいまいさを含んでおり, そのようなデータを扱うのにファジィ理論を適用するのが有効である.本論文では, Zadehのファジィ事象の確率概念を用いて, あいまいさを伴って発生するファジィ区間データを定義し, このファジィ区間データに基づいたベイズ流の事後確率を導いている.ただし, 与えられたファジィ区間データのメンバシップ関数を直接的に利用する手法では, そのメンバシップ関数を忠実に取り扱わなければならないことと, 計算上の効率的な面での問題があるが, メンバシップ関数の中点を代表値として処理する方法を用いれば, それらの問題が解決できる.本研究では正規母集団からのファジィ区間データを仮定し, 母数θの事前分布が正規分布であれば, ベイズの定理に基づく事後確率分布が提案手法を用いて近似的に正規分布となることが示される.その結果, ファジィ区間データが得られたときでも, 母数θに関する通常のベイズ区間推定とさほど変わらない近似的なベイズ区間推定が可能になることを示している.また, 実際にファジィ区間データが得られる状況では, つねに理想的な左右対称形のメンバシップ関数で得られるとは限られないので, シミュレーションにおいては, 現実的な状況を踏まえた上で, 台形型メンバシップ関数の左右対称性を完全には満たさない場合について検討している.その結果, 本手法の実用性を示すことができた.

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© 1995 日本知能情報ファジィ学会
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