1995 年 7 巻 6 号 p. 1269-1277
人物評価, 優秀な人材選択などの人事意思決定において, 従来用いられた評価尺度はクリスプ値によって表されたものであるため, 評価の信頼性と妥当性には, 問題点があると思われる.人が人を認知・考察したり評価することは, 評定者の主観的な判断に左右されやすい.評価に伴うあいまいさの存在は, 人間の社会的情報の処理過程の基本的特質を反映する必然的なものである.従って, 人事評価の新しい評価尺度の開発が期待されている.本研究では, 人間の主観的な判断が反映できるファジィ尺度を用い, ファジィ要素の持つファジィ関係式逆問題によって人事意思決定問題を定式化する.さらに, ファジィ要素の持つファジィ関係式逆問題の解法を提案し, この解法によって, 客観的に観測できる量から, 観測できないが意思決定上重要な量を観測することができる.特に, 評価に伴うあいまいさを表現することができ, 評価の信頼性と妥当性の向上に寄与することが期待できる.