日本ファジィ学会誌
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機能言語理論によるデータ融合に関する一考察
福山 義幸菅野 道夫
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1996 年 8 巻 1 号 p. 187-203

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抄録
我々の身のまわりには、音声情報、画像情報、言語情報、数値情報など様々な形態の情報が存在している。我々は、日常生活において発生する様々な問題を解決する場合、一つの形態の情報を利用することよりも、二つ以上の形態を組み合わせて問題解決を図る機会が多い。人間は、二つ以上の異なる形態の情報もうまく融合させ、そこから有用な情報を得るという情報処理の手続きを無意識のうちに行っている。このような人間の情報処理をデータ融合と呼ぶ。本研究の目的は、人間が日常行っているデータ融合を計算機上で実現することである。人間の情報処理を考える上でまず第一に注目すべきことは、言語の使用である。人間は、言語を思考の手段として使用している。Wittgensteinは、「言語は思考の道具ある。」と述べている。つまり、人間の情報処理において言語は必要不可欠である。したがって、様々な形態の情報を融合する場合、言語が基本となり、言語に基づいた融合が必要と考えられる。人間の、言語に基づいた情報処理をインテリジェントコンピューティングと呼ぶ。本研究では、インテリジェントコンピューティングを実現するための枠組について考察する。データ融合を実現するためには、「情報の意味」というものを考慮する必要がある。社会記号論において、情報を含めた記号の意味は、我々が日常生活している社会とその社会の中での我々の知的活動によって決定される、としている。我々は、情報の意味を扱うための手段として、選択体系機能言語理論を用いる。選択体系機能言語理論は、この社会記号論の枠組において言語をとらえようとするアプローチであり、インテリジェントコンピューティングの考え方を実現する上で重要であると考える。本研究では、選択体系機能言語理論に基づいた言語によるデータ融合の枠組を提案する。データ融合の応用として、ゲートボールゲームにおける、監督から打者に対しての口頭命令を生成するシステムを提案する。選択体系機能言語理論によれば、我々の社会には法律、イデオロギー、モラルなどの文化のコンテクストと呼ばれるものが存在し、情報の受けてである我々の倫理観や価値観などに影響を与えている。ゲームにおいても独自のルールや戦略などが存在し、ゲームの中という限定された社会において我々に影響を与えている。言い替えれば、ゲームは社会の一つのモデルと考えられる。本研究では、ゲームの一つとしてゲートボールを取り上げる。本研究で提案するシステムは、ゲートボールにおけるルール、戦略、戦術を状況に基づいて解釈そ、その状況に適したボールの打ち方を指示するシステムである。ゲートボールにおける状況を認識するためには、得点状況、経過時間などの数値情報だけではなく、各ボールの位置などの画像情報、ゲートの通過状況などの言語情報を融合させる必要がある。本システムは、いくつかのモジュールから構成されているが、各モジュールにおけるデータ処理について説明する。また、ゲートボールにおける一場面を入力し、本システムにおけるデータ処理の流れを概説するとともに、出力結果について考察する。
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© 1996 日本知能情報ファジィ学会
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