抄録
合衆国では、老人ホームなどの様々な施設での庭園の治癒効果が注目されている。しかしどのような庭園が、どのような世代あるいは患者に、どのような効果をもたらすかについては研究されていない。
庭園のデザインとその治癒効果に関する研究の第一歩として、2007-2009年、夏季と冬季にアメリカ合衆国ニュージャージー州にある総合老人ホームであるメドフォード・リーにおいて、中庭のデザインの趣向性に関するアンケート調査を行った。メドフォード・リーのコートヤード・アパートは、自活能力のある高齢者向けの施設である。1ブロックあたり5-6件のアパートからなる35のブロックから構成され、それぞれのブロックは同一サイズであるが異なったデザインの中庭が作られている。アンケート調査では35の中庭から7つの代表的なデザインを選び、約150名の居住者を対象として調査を行った。
その結果、夏季と冬季と共に、日本庭園風のデザインを「最も好ましい」とする票が最多であり、これを「最も好ましくない」とする票が全く見られなかった。その一方で、ハーブガーデンを「最も好ましくない」とする票が最多であり、これを「最も好ましい」とする票が全く見られなかった。これによって、庭園の趣向性はデザインによって異なり、アメリカ人の高齢者にはあまり馴染みのない日本庭園風のデザインが高い評価を得ることを確認した。