抄録
朝鮮時代中期の代表的な儒学者であり、隠遁を繰り返した尹善道 (孤山) の庭園の空間構成について、史料や現況測量、試掘をもとに考察した。家督を譲った後の常の住まいとして営まれた金鎖洞別業は大きな滝の上部に広がる緩やかな傾斜を持つ山上部に営まれ、山裾から滝に至るまでの経路にみられる景の展開には隠遁に至る孤山の強い意志を読みとることができた。常の住まい・會心堂の立地選定には風水論とともに朱子の影響が強くみられた。さらに神仙世界により近づいた心境を読みとることができた。また一貫して教育の場が設けられていたことは孤山の隠遁空間にみられる特徴であり、これは日本でみられた隠遁とは大きく異なるものと言える。