集団力学
Online ISSN : 2187-2872
ISSN-L : 2187-2872
日本語論文(英語抄録付)
森のようちえんを住民自治運動の歴史に位置づける試み
鳥取県智頭町の事例
樂木 章子
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2022 年 39 巻 p. 3-20

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抄録

 近年、特定の園舎を持たずに自然の中で子どもを育む新しい保育活動が、子育て世代の間で注目を集めるようになった。典型的な中山間過疎地域の一つである鳥取県智頭町には2009年度から「森のようちえん・まるたんぼう(以下、まるたんぼう)」が設立され、ユニークな保育活動を展開し、現在、智頭町の地域経営の柱としての役割を担うに至っている。

 本研究は、まずは、まるたんぼうが智頭町という小さな町に根をおろした経緯とその背景、保育理念や保育の特徴、および、その後の活動や組織の拡大を整理した。次いで、子育てに関する取り組みが、高齢化と人口減少の最前線であり、むしろ対極的とも思える中山間過疎地域で創生した背景を、地域の歴史を振り返りつつ検討する。具体的には、智頭町において、1984年以来、38年間にわたって展開されてきた草の根住民自治運動の歴史を3つのフェーズにわけて概観し、それぞれの特徴について取りまとめた。最後に、まるたんぼうという幼児教育の場と住民自治運動という、一見、相容れない2つの活動の間に、地域活性化と教育に共通する理念というリンクを見出し、まるたんぼうの誕生を住民自治運動の歴史の流れの中に位置づけて考察した。

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