地学雑誌
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表紙
ハットンの不整合
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2011 年 120 巻 3 号 p. Cover03_1-Cover03_3

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抄録
 (表面)James Hutton(1726-1797)は近代地質学の確立に貢献した著名な英国人地質学者である.とりわけ,彼を有名にしたのはエジンバラの東方約100kmの英国東岸に露出する不整合の発見である(表紙).表紙の写真は問題の不整合の延長を北から南側へ鳥瞰したものである.写真を撮影した地点はSiccar Point(最も代表的な不整合の露頭所在地で,本誌でも村田(1987)や白尾(2003)によって紹介されている)で,そこから南方への眺望である.遠景にみえる岬,手前右側の丘から潮間帯に至る海岸の表層に不整合面が続く(図1).不整合面の上の地層であるオルドビス紀の赤色砂岩と泥岩の互層は陸側に緩く(約20°)傾斜しているが,下位のシルル系の砂岩・泥岩の互層はほぼ垂直に起立している.不整合面の直上は凹凸がかなり激しく,そこに基底礫岩層が顕著に発達する.下位の地層が堆積したシルル紀の時代に浅海底で水平に堆積していた地層がオルドビス紀までにほぼ垂直に起立する大変動が存在したことを示している.この時期はスコットランド(ローレンシア大陸:北米大陸)が英国(ゴンドワナ大陸:西アフリカ)に衝突合体してアパラチア山脈とその東方延長(アイルランド+連合王国)の造山帯が誕生した古生代半ばの衝突型造山運動の時代に対応する(丸山ほか,2011).
 (裏面)表紙を撮影した丘地点の背面にある斜面(Siccar Point)で観察される基底礫岩層と上位の赤色砂岩・泥岩互層の境界.基底礫岩層の内部には上位の有律互層の層理面に大きく斜交する葉理が発達し,礫岩,砂岩,少量の泥岩が発達する.ハットンの不整合面は,この礫岩層のさらに下位に位置する.
(写真・解説:笠原順三 2011年3月27日撮影)
© 2011 公益社団法人 東京地学協会
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