地学雑誌
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論説
ブナ成熟林における成熟林エリアとギャップエリアの土壌有機炭素量および質の比較
飯村 康夫廣田 充井田 秀行大塚 俊之
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2013 年 122 巻 4 号 p. 723-732

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抄録

 冷温帯ブナ成熟林生態系において林冠構造の違いによる表層土壌有機炭素の量および質的特性を比較した。1haの調査区内で典型的な成熟林エリア(n=7)およびギャップエリア(n=3)を選抜し(各400m2),リター生産量,土壌有機物量,土壌フミン酸の質的特性を比較した。2005年から2011年までのリター生産量は全体的に成熟林エリアで高い傾向が認められ,とくに葉リターはつねに高い傾向を示した。土壌有機物量は成熟林エリアで有意に多く,CN比は高い値を示した。土壌フミン酸の光学的特性から推定した各種官能基炭素割合を比較したところ,成熟林エリアでは芳香族炭素割合が高く,炭水化物炭素や脂肪族炭素割合は比較的低いことが推察された。また,微生物分解程度の目安となる脂肪族炭素:炭水化物炭素比は成熟林エリアで比較的低い結果が示された。成熟林エリアにおける土壌フミン酸の黒色度がそれほど高い値ではないことも合わせて考察すると,本研究サイトでは,成熟林エリアでより土壌有機炭素が蓄積しやすいと結論づけられるが,一方で,分解ポテンシャルは比較的高い土壌有機炭素が多く含まれていることも化学構造特性やCN比から示唆された。

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