2015 年 124 巻 3 号 p. 515-523
アメリカ,ワイオミング州南西部に広がる平原には,300∼89万年前の溶岩に覆われたメサ・ビュート群が特徴的な景観をつくりだしている。リューサイトヒルズと称される一連の溶岩類は,その名が示す通りリューサイトを石基鉱物として含む珍しいマグマ活動により形成されており,ランプロアイトと呼ばれる岩石に分類される。ランプロアイトは地球上で最も不適合元素に富んだ始原的マグマであり,時にダイアモンドを産することからも,そのマグマ源はマントル深部に存在する。リューサイトヒルズ・ランプロアイトの放射性元素同位体組成は,海洋マントルに認められる範囲を大きく逸脱していることから,過去に交代作用を被った太古代-原生代大陸リソスフェアがその起源マントル物質の候補として考えられ,南方に位置するコロラド台地を形成した「リソスフェア落下イベント」により誘発されたマグマ活動であると推測される。