地学雑誌
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第III部 火星の水に関連する地形プロセス
火星のガリー
―研究の動向―
トーマス・ パークナー
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2016 年 125 巻 1 号 p. 155-161

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抄録

 火星のガリーは科学研究の対象であるだけでなく,水や生命の存在を探査するための対象でもある。火星のガリーはMalin and Egett (2000) による記念碑的な論文で最初に認定され,以来174編以上の論文が出版されてきた。典型的なガリーは劇場形の源頭部に端を発し,下方に向かって狭まった流路となり,三角形の堆積地形で終わる。ガリー形成には多くのプロセスが提唱されている。液体による侵食プロセスとして,地表流,谷頭侵食,土石流や他の湿潤性斜面移動などがある。液体の起源としては,地下水の滲出,地下深部の帯水層,融雪,表層ないし深層の地下氷の融解などが指摘されている。液体を必要としない成因として,乾燥粒子流やドライアイス崩壊説もある。それらの説を支持する,または反証となる形態的証拠について論評を加えた。火星では数万個のガリーが認定されているが,それらは両半球の中・高緯度に集中する。ガリーは3 Ma以降も活動した可能性がある。今後の研究では地球上での研究が参考になるだろう。地球では,線状のガリーは次第に過傾斜の側壁をもつようになり,その後,深層崩壊を引き起こすこともある。これはガリー複合体と呼ばれる。ガリー形成は地すべりによっても起こり,この場合は地すべり複合体と称される。このような一連のプロセスは火星でも起こりうる。将来の探査では,ガリーの発達過程を解明するために,侵食相と堆積相に焦点をあてて,これらの複合体の認定することが望まれる。

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© 2016 公益社団法人 東京地学協会
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