地学雑誌
Online ISSN : 1884-0884
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表紙
岩石–水相互作用にともなう第一次生命体の前駆的な化学反応プロセスの一部
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2019 年 128 巻 4 号 p. Cover04_01-Cover04_02

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抄録

 表紙は,さまざまな金属タンパク質の誕生プロセスを模式的に描いたものである.岩石が水と反応すると,岩石に含まれる多種多様な鉱物からさまざまな元素が溶解する.この過程は原始生命にとって重要な無機栄養塩を供給し,多様な元素が大気起源の無機生命構成主要元素と反応し,さらに高次の有機物が合成されていったと考えられる.冥王代の地球表層に露出していた典型的な岩石は,KREEP玄武岩,アノーソサイト,およびコマチアイトの3種類で,マグマオーシャンから結晶化したシュライバサイト(Fe3P)などの無水の還元的な鉱物を含んでいた.約43.7億年前にABEL爆撃(Part I)がはじまると酸化的大気(CO2–H2O–N2)が生まれ,その時に岩石–水相互作用がはじまった.KREEP玄武岩は,Fe2+, S, P, Ti, Zn, Moなどを供給し,アノーソサイトは,Ca, Cr, Mg, Fe2+, Mn3+など,またコマチアイトはFe2+, S, Ni, Mgなどをおのおの供給した.それぞれの岩石表面には岩石–水相互作用を通して供給された元素を利用した多種多様な金属タンパクが合成され,自然原子炉が駆動するエネルギー・物質循環系のなかで高次の生命構成単位を生みだした.そのプロセスのなかで第一次生命体がバイオフィルム様のコロニーを上記の3種類の岩石表面でつくり,さらに複雑に進化していったと考えられる(詳細は吉屋ほか,2019参照).

(丸山茂徳)

© 2019 公益社団法人 東京地学協会
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